Djulbegovic B, Hozo I, Mayrhofer T, van den Ende J, Guyatt G: The threshold model revisited. J Eval Clin Pract 2019;25:186-195. doi: 10.1111/jep.13091 PMID: 30575227
文献:Djulbegovic B, Hozo I, Mayrhofer T, van den Ende J, Guyatt G: The threshold model revisited. J Eval Clin Pract 2019;25:186-195. doi: 10.1111/jep.13091 PMID: 30575227
治療閾値は益と害(Benefit and harm)あるいは益とコスト(Benefit and cost)、さらにその比B/HあるいはB/Cで決まりますが、治療閾値を超えた疾患確率あるいはアウトカムの起きる確率ではB>Hとなりますが、BとHの差、すなわち正味の益Net benefitは疾患確率あるいはアウトカムの起きる確率が高くなるほど大きくなります。治療閾値はそれを超えたら治療をしてもいい値ですが、疾患確率の場合は、益を最大化するには、何らかの診断法を実施して疾患確率を高くしてから治療を開始すべきと考えられますし、実臨床ではそれが実行されていると思います。
Utilityユティリティ(効用)をNeumann PJらは次のように定義しています。“A utility is a measure of preference. In this context a utility is the measure of the preference or value that an individual or society places upon a particular health state. ” (Neumann PJ 2017) つまり、“特定の健康状態に個人または社会が置く好みまたは価値を測定した値”を効用と呼びます。値については、効用値という用語が用いられる場合もあります。また、個人の考える効用値は個人個人で異なり、個人の考える効用値と社会を代表する効用値は異なる場合もあります。なお、経済学では商品、サービスに対する好み(選好)を効用と言っています。
Neumann PJ, et al. ed. :Cost-Effectiveness in Health and Medicine. 2nd., 2017.
Pauker SG, Kassirer JP: The threshold approach to clinical decision making. N Engl J Med 1980;302:1109-17. doi: 10.1056/NEJM198005153022003 PMID: 7366635
Kassirer J, Wong J, Kopelman R: Learning Clinical Reasoning. 2nd Edition. 2010, Wolters Kluber, Lippincott, Williams & Wilkins, PA, USA.
Sox HC, Higgins M, Owens DK: Medical Decision Making (2nd ed.). 2013, Wiley-Blackwell.
Straus SE, Glasziou P, Richardson WS, Haynes RB: Evidence-Based Medicine: How to practice and teach EBM. (5th edition) . 2019, Elsevier, London, UK. 第5版
また、④も非常に重要です。もし、診断能が高い、すなわち感度・特異度の高い検査を施行して、陰性の結果が出た場合、疾患確率が低下し、治療閾値を下回ることが起き得ます。複数の診断法を実施する場合は、結果がどのような組み合わせになるか、Sox HC 2013の記述を引用すると、”gamble”です。検査結果が陰性で、疾患確率が低下した場合でも、治療閾値を超えていることを確認する必要があると思うのは正しい考え方です。それは、診断法の治療検査閾値Test-treatment thresholdによって知ることができます。これについては、後述する予定です。
実際の診療では、疾患確率が治療閾値を超えても、疾患でない割合、すなわち、1-P(D+)がどれくらいあるのかは、臨床決断に大きく影響します。患者の立場で、考えると、たとえ疾患確率が治療閾値を超えたとしても、本当はその疾患ではないのに、まちがって治療を受ける確率がどれくらいなら許容できるか考えさせてほしいということになるでしょう。Shared Decision Making 協働意思決定で疾患確率も議論の対象にせざるを得ない状況があると考えられます。
図3に関係する文献:
Kassirer J, Wong J, Kopelman R: Learning Clinical Reasoning. 2nd Edition. 2010, Wolters Kluwer, Lippincott, Williams & Wilkins, PA, USA.
Pauker SG, Kassirer JP: Therapeutic decision making: a cost-benefit analysis. N Engl J Med 1975;293:229-34. doi: 10.1056/NEJM197507312930505 PMID: 1143303
Sox HC, Higgins M, Owens DK: Medical Decision Making (2nd ed.). 2013, Wiley-Blackwell.