Cochrane RoB 2を用いるウェブツール

ランダム化比較試験のバイアスリスク評価ツールであるCochrane risk of bias toolが2019年からversion 2.0となり、シグナリングクエスチョンに答えることで、研究ごとのバイアスリスクをLow, Some concerns, Highの3段階で評価する方法に変わりました。Link Excelマクロを用いて、自動判定するファイルも用意されています。

ドロップダウンメニューからシグナリングクエスチョンに対する回答を選択していくと、バイアスリスク評価ができるウェブツールを以前から公開していました。今回、ドメイン2の治療企図からの乖離によるバイアスリスクについて判定アルゴリズムを1つ追加しました。Link

今回の課題は、ドメイン2のPart 1の判定アルゴリズムです。今までは、図1に示すような回答の組み合わせの場合、Part 1の判定は未決で白丸のままでした。

図1. ドメイン2 Part 1のバイアスリスク判定。

このような場合、白丸部分をクリックすると、図2のように関連するアルゴリズムが表示されます。青の太字が選択した回答と一致している部分で、この組み合わせの中には、y y pn NANA y NAという組み合わせはありません。判定がLowになる回答の組み合わせは3つだけでした。

図2.青の太字が選択した回答と一致している部分で、この組み合わせの中には、y y pn NANA y NAという組み合わせはない。

これらの回答の組み合わせは、上記Cochrane risk of bias tool version 2.0に関する解説のページで、Link Full guidance documentにかかれているアルゴリズムに沿って作成したものです。該当する箇所は、Table 6またはFigure 2です。そこを見ると、シグナリングクエスチョン2.1と2.2は”Either Y/PY/NI“で、2.3がN/PNの場合Low riskの判定となることが記載されています。”Either Y/PY/NI”の解釈で、いずれかが”Y/PY/NI”であるという場合に、両方が”Y/PY/NI”であるも含めるか、いずれか片方だけが”Y/PY/NI”の場合だけに限定するかが問題となります。今までは、後者の解釈に基づいてアルゴリズムを設定していましたが、今回、両方が”Y/PY/NI”である場合も含めるアルゴリズムに変更することにしました。言い換えると、参加者も医療提供者も介入について知ることができる場合でも、すなわちいずれも盲検化が行われていない場合でも、治療企図からの乖離が臨床試験の文脈と関係ない場合は、Low riskと判定するということになります。また、医療提供者あるいは参加者だけが介入を知っている場合と、両者とも知っている場合は同じ評価になるという意味でもあります。盲検化の有無よりも、治療企図からの乖離が臨床試験の文脈と関係あるかどうかの判断がより重要になるということにもなります。

さて、今回お話ししているウェブツールはアルゴリズムを各自の望ましいと思うものに書き換えて利用することができるようになっています。今回その機能を用いてアルゴリズムを修正しました。図3で示すように、MenuからAlgorithmを選択すると、図4に示す、その時点のアルゴリズム一覧が示されます。

図3.Menuからアルゴリズムを表示させる。
図4.その時点のアルゴリズム一覧。2.1でLowになる回答の組み合わせは3種類だけ。

ここに、シグナリングクエスチョンの2.1の回答の組み合わせでLow判定になるものを追加します。タブ区切りで図5に示すように、1行を追加しました。

図5.2.1にLowになる回答の組み合わせを追加。

そして、図5に示す、Saveボタンをクリックすると、図6のように、確認のメッセージが出るので、OKをクリックします。

図6.書き換えたアルゴリズム一覧を保存する際の確認のメッセージ。

次に、このウェブページ全体をHTMLファイルとして保存します。図7のように、MenuからSaveを選択します。

図7.HTMLファイルとして保存する。MenuからSaveをクリック。
図8.名前を付けて保存する。

図8のように、ブラウザの右上の方にファイルをダウンロードしてPCに保存するメッセージが出るので、名前を付けて保存をクリックします。もし、Study IDとOutcomeが入力されている場合は、それらの文字列をアンダーバーで結合したファイル名が提示されます。

図9.ファイル保存のためのダイアログ。ファイル名を付け、あるいは修正して保存ボタンをクリック。

図9のようにファイル保存のためのダイアログが出るので、ファイル名を付けて保存します。

図10.ダウンロードの状況。

ブラウザの右上の方に、ダウンロードの状況が表示され、終了すると図10のように表示されるので、ここでファイルを開くをクリックすると保存したHTMLファイルがブラウザで開かれます。また、フォルダのアイコンをクリックするとそのファイルを含むフォルダが開かれます。このパネルが無くなった後であれば、・・・をクリックしてダウンロードを選択すると、直前までダウンロードしたファイルの一覧が表示されるので、そこから選択して開くこともできます。

図11.ダウンロードしたファイルでアルゴリズムを確認。

ダウンロードしたファイルをブラウザで開き、MenuからAlgorithmを選択して、2.1の所を確認すると修正した内容に変わっています。

図12.ドメイン2のテスト。

ドメイン2で2.1のシグナリングクエスチョンに最初と同じ組わせてで回答を選択すると、今度は、Lowの判定になります。

さて、ダウンロードしたファイルを右クリックしてコピーして貼り付け操作を行うとファイルを複製使用することができます。インターネットに接続された環境であれば、上記のURLを開いた場合と、同じように動きます。

バイアスリスク評価はひとつの研究-ひとつのアウトカムで1枚ずつ用いて行い、MenuからSaveして記録しておくことができます。その場合、保存されたHTMLファイルはローカルPCにあります。例えば、研究が5件で評価するアウトカムが5つであれば、25枚のHTMLファイルを保存することになります。

また、ひとつの研究-ひとつのアウトカムの評価が終わったら、上の方にあるCopy to Clipboard with Summaryのボタンをクリックし、Excelで開いたMindsのRoB 2用の評価シートに結果を貼り付けることもできます。

このウェブツールはバイアスリスクのドメインの行をクリックするとシグナリングクエスチョンが、各シグナリングクエスチョンをクリックすると解説が表示されます。

図13.シグナリングクエスチョンの表示と解説の表示。各行をクリックすると表示される。

Cochrane risk of bias tool version 2.0ではシグナリングクエスチョンの回答に基づく判定とレビュアの判定が異なる場合、後者を優先することになっています。このウェブツールではその変更はできないので、評価シートの方でレビュアの判定を設定してください。その旨をコメント欄に記入してSaveしておくといいと思います。

また、バイアス効果の向き、すなわち、過大評価(介入群に有利)・過小評価(対照群に有利)、差が無い方へ・差がある方へ、の判定はオプショナルになっていますが、ドメイン名の右のラジオボタンで記録することはできます。