Living systematic review (SR) ”生きたシステマティックレビュー”と称する論文があります。特に、最近はCOVID-19に関するSRがLiving SRとして発表されているのをみかけます。Livingなので、今後変わりうるという意味を含んでいます。SRなので、そのリサーチクエスチョンあるいは、クリニカルクエスチョンに関する新しい論文が発表されたら、それを追加してSRを更新updateして新しい論文として発表することになります。変更が小さい場合は、追加分だけ発表されることもあります。
実際の例を見てみましょう。Siemieniuk RA, et al: Drug treatments for covid-19: living systematic review and network meta-analysis. BMJ 2020;370:m2980. doi: 10.1136/bmj.m2980 PMID: 32732190は2020年7月30日にBMJに発表された論文で、タイトルにLiving systematic reviewという言葉が含まれています。この論文をPMIDからPubMedで開くと、Abstractは表示されず、下の方に、Update in となっていて、2020年7月30日以降に更新された論文が表示されます。この例では、2020年9月11日、2020年12月17日のアップデート、そして最新のアップデートが2021年3月31日です。これらのリストの下に、2020年7月30日の論文のAbstractが示されます。アップデート版のリンクを開くと、この論文の場合は、Abstractは表示されません。そして、Update ofという見出しの下に、古い論文のリンクが表示されます。Update inとUpdate ofに注意する必要があり、もしUpdate inの見出しがあったら、アップデート版があるので、そちらを見る必要があるということがわかります。
この例で分かるように、Living SRはPubMedでの取り扱いが通常のSRの論文とは異なっており、検索した結果からアップデートがある場合あるいは古い版がある場合は、それがわかるようになっています。
CochraneのSRもPubMedで検索できますが、例えば、Piechotta V, et al: Convalescent plasma or hyperimmune immunoglobulin for people with COVID-19: a living systematic review. Cochrane Database Syst Rev 2020;7:CD013600. doi: 10.1002/14651858.CD013600.pub2 PMID: 32648959は2020年7月10日の出版で、Update inと表示され、そちらをクリックするとAbstractも表示されます。そして、第一著者がChai KLに変わっています。
さて、Living SRがどのようなものかについては、Elliott JHらが2014年に論文を発表しているので、それが参考になります。Elliott JH, et al: Living systematic reviews: an emerging opportunity to narrow the evidence-practice gap. PLoS Med 2014;11:e1001603. doi: 10.1371/journal.pmed.1001603 PMID: 24558353
出版形式、作業プロセス、著者チームのマネージメント、メタアナリシスの更新において、従来のSRとはいろいろな点で異なっています。現在のICTを活用して、迅速にアップデートを行い、迅速に出版するというのが特徴と言えます
Living SRに関連した事項として、Rapid recommendation、Evidence ecosystemなどがあります。
BMJは2016年にRapid recommendationに関する論文を発表しています。Siemieniuk RA, Agoritsas T, Macdonald H, Guyatt GH, Brandt L, Vandvik PO: Introduction to BMJ Rapid Recommendations. BMJ 2016;354:i5191. doi: 10.1136/bmj.i5191 PMID: 27680768
BMJはMAGICappと協働し、RapidRec projectを推進しているようです。MAGICappの活動は、診療ガイドラインだけでなく、Evidence ecosystem、Rapid recommendationと深いかかわりがあります。
また、Evidence ecosystemについては、上記のElliot JHらの論文や、下記のBoutron Iらの論文、Gough Dらの論文が参考になります。
Boutron I, et al: The COVID-NMA Project: Building an Evidence Ecosystem for the COVID-19 Pandemic. Ann Intern Med 2020;173:1015-1017. doi: 10.7326/M20-5261 PMID: 32931326
Gough D, et al: Clarifying differences between reviews within evidence ecosystems. Syst Rev 2019;8:170. doi: 10.1186/s13643-019-1089-2 PMID: 31307555