GeminiでMCQを作成する

GoogleのGemini 2.5 Flashで、Multiple-Choice Question (MCQ)多選択肢問題を作成してみます。HTMLファイルを作成し、設問に従って選択肢をクリックすると、正解かどうか分かるようにします。いわゆる、Quizクイズの作成で、作成されたHTMLファイルはウェブサーバーにアップロードして、外部からもアクセスできるようにします。

Google Chromeを開き、下の図のように右上のメニューボタンから、Geminiを開きます。

Google Workspace Business Standardを契約しているので、Gemini 2.5 Flash、2.5 Pro (preview)、Personalization (preview)が使えますが、2.5 Flashを使うことにします。

Geminiでは、今までの使用履歴が残っていて、それを前提に回答が作成されますので、チャットを新しいセッションとして始めるためには、左上の2つ目のアイコンをクリックし、チャットを新規作成をクリックしてから始めます。今回は、すでに、新しいセッションとして扱われていたので、チャットを新規作成部分はdim状態でしたので、そのままプロンプトを書き込むことにします。

まず情報ソースとして、Web pageを指定し、その内容に基づいて、MCQを作成しようと思います。そこで、以下のプロンプトをあらかじめテキストエディターで書いておき、コピペします。

https://info.zanet.biz/lec/srsz/1-rob-main/one.htm
このウェブページの情報に基づき、多選択肢問題の内、5者択一問題を作成し、インタラクティブなHTMLファイルを作成してください。
設問は「次の内、正しいものはどれか?」を基本形とします。一部は「次の内、誤りはどれか?」としてもよい。
正しい選択肢を太字にする必要はありません。
表現から正誤の判断ができないようにするため、間違いの選択肢の表現は「・・・ではない」のような否定形は可能な限り使わないようにします。
いずれかの選択肢を選ぶと、即座に、正しい場合は「正解です!」と表示します。間違っている場合は「誤りです!」と表示します。
回答を確認のボタンは不要です。
一つの問題を何回もチャレンジできるようにします。
系統的レビューではなくシステマティックレビューとしてください。
ソースに基づくという記述は不要です。
正解が選択肢の1から5の特定の番号に偏らないようにしてください。
1問1ページとし、Prev、Nextのボタンを付けてください。
ポップアップメニューで問題を移動できるようにしてください。
全部で10問作成してください。

かなり、細かく指定しています。ソースは私の担当したある講義のための学習資料で、PowerPointで作成したスライド+ノートからHTMLファイルを作成したものです。

このプロンプトを書き込み、実行すると、思考プロセスを表示となり、数分で、HTMLのフィールドにコピペ可能な形で、出力されます。コピーボタンをクリックして、NotePad++やメモ帳などに貼り付けて、そのまま、例えば、quiz-rob-c.htmのようなファイル名でファイルを保存します。拡張子は.htmまたは.htmlとします。

その内容は<!DOCTYPE html>から始まり、</html>で終わる、HTMLファイルなので、保存したファイルをダブルクリックしてブラウザーで開くとこのようになります。

これでいいように見えるのですが、選択肢を一度クリックすると変更ができないようになっていました。

プロンプトでは、”一つの問題を何回もチャレンジできるようにします。”と指示したのですが、実現されていませんでした。

そこで、より具体的な指示、”一つの問題で、一度選択肢をクリックしても、何回も変更がチャレンジできるようにしてください。”を書き込んでみます。前の指示が履歴で残っているので、このプロンプトだけで十分です。

このような回答とともに、修正されたHTMLが出力されました。これを上記のようにテキストエディターにコピペして、HTMLファイルとして保存して開くと、以下の様でした。

まず、正解の選択肢をクリックした場合です。

誤った選択肢をクリックした場合です。

これで、正解を確認しながら、別の問題へと進めていくことができます。

ここで、注目すべきは、Geminiでは一つのセッションが続いている間は、前のやり取りを前提に回答が作成されるという点です。これは非常に重要だと思います。

今回は、情報ソース、つまり、学習資料がウェブページなので、それぞれの問題の元になる箇所へのリンクをタイトル部分の問題という箇所に付けられないか聞いてみたいと思います。

すると、そのまま改訂したHTMLテキストが出力され、保存したHTMLファイルを開くと、確かに問題の所にウェブページへのリンクが付けられていました。

最後に作成したMCQをウェブページとして閲覧できるようにしました。

今回は、問題ごとにカードのように表示するようにしましたが、1ページに全部を表示する形式にもできます。

プロンプトに”全問題を1ページに表示するようにし、移動のボタンは無しにしてください。”と書き込み実行すると、以下の様な回答になりました。

そのHTMLはこちらです。

それでは、最後にチャットを新規作成して同じプロンプトで再度MCQを作成してみましょう。

最初のプロンプトでは、HTMLファイルはできないという回答になり、”前のセッションではHTMLファイルができましたよ。”とのプロンプトでは、ご希望の形式をお知らせいただければ、それに沿ったコードの生成を試みます、との回答でした。

そこで、”1つのファイルにすべてのHTML、CSS、JavaScriptを含める形式にしてください。”とのプロンプトで、最初のようにMCQのHTMLテキストが作成されました。

右側が新しく作成されたMCQです。内容が変わっています。また、形式も変わっています。設問のすべての出だしが、”次の内正しいものはどれか?:”になっていたのが亡くなっています。設問の”次の内正しいものはどれか?:”の部分は不要ですというプロンプトを追加してもよかったのですが、指示しなくてもなくなっていました。

違う問題が作成されるということは、非常に重要です。追再試験の作成にも使えると思われます。新規セッションで再度作成したMCQはこちらです。

さらに、最初のプロンプトを少し修正して、HTMLのコードを作成するように書き換えてみました。

https://info.zanet.biz/lec/srsz/1-rob-main/one.htm
このウェブページの情報に基づき、多選択肢問題の内、5者択一問題を作成し、インタラクティブなHTMLコードを作成してください。
設問は「次の内、正しいものはどれか?」を基本形とします。一部は「次の内、誤りはどれか?」としてもよい。
正しい選択肢を太字にする必要はありません。
表現から正誤の判断ができないようにするため、間違いの選択肢の表現は「・・・ではない」のような否定形は可能な限り使わないようにします。
いずれかの選択肢を選ぶと、即座に、正しい場合は「正解です!」と表示します。間違っている場合は「誤りです!」と表示します。
回答を確認のボタンは不要です。
一つの問題を何回もチャレンジできるようにします。
系統的レビューではなくシステマティックレビューとしてください。
ソースに基づくという記述は不要です。
正解が選択肢の1から5の特定の番号に偏らないようにしてください。
1問1ページとし、Prev、Nextのボタンを付けてください。
ポップアップメニューで問題を移動できるようにしてください。そのポップアップメニューは設問の右側に置いてください。
全部で10問作成してください。

このプロンプトではこのような形式になりました。

さて、情報ソースをWeb pageのURLで指定しましたが、Gemini 2.5 Flashでは、PDFファイルを指定することもできます。その場合は、用意したPDFファイルをプロンプトを入力するフィールドにドラグアンドドロップします。そして、同じようにMCQ作成のプロンプトを書き込みます(コピペします)。

このような画面になります。同じようにMCQのHTMLコードを作成してくれました。

さて、Geminiが作成したMCQの内容は最終的に人がチェックする必要がありますが、ほとんどの場合、そのまま使えるレベルです。今回の例はGeminiが作成したMCQをそのまま提示しています。なお、YouTubeの動画を直接、情報ソースとして読み込ませることはできません。

NotebookLMでは、複数のPDFファイル、YouTubeの動画、Web pageを情報ソースとしてアップロードして、同じようなプロンプトで、MCQを作成することができます。

MCQの作成は、学習資料がPDF, Web page、あるいはYouTubeの動画であれば、教える側も、学ぶ側も、可能であるということになります。これはとても重要な点だと思います。

以下はNotebookLMの利用に関しての議論です。

また、教える側は初心者レベルの質問を用意して、学ぶ側はそれを自分でプロンプトとして入力して、回答を確認する。それが済んだら、より複雑な質問を用意して、学ぶ側はそれを自分でプロンプトとして入力して、回答を確認する。それが済んだら、学ぶ側は各自自分の疑問に思うことをプロンプトで聞きながら、理解を確認するというやり方ができます。学ぶ側は、最初は知識がないので、何を質問したらいいかもわからないので、初心者レベルの質問は教える側が、用意してあげるということに意味があると思います。より複雑な質問も、教える側が用意することで、学ぶ側に教える側の観点が伝わっていくと思います。

AIで作成するダイアログ動画

GoogleのNotebookLMは自分で選択した情報ソース:PDFファイル、ウェブサイト、YouTubeの動画、その他をアップロードして、それらの情報に基づいて、要約を作成したり、質問に対する回答を得たり、さらに二人の”詳細な会話”の音声ファイルを作成することができます。単にソース情報の要約を作成するだけでなく、”詳細な会話”のカスタマイズで対話の内容について指示し、さまざまな課題に関するダイアログを作成することができます。

作成した音声ファイル(WAV形式)をダウンロードし、たとえば、Microsoft Wordのディクテーションのトランスクリプトからそのファイルを開いて、文字起こしすることができます。さらに、そのテキストから、Gammaでスライドを作成し、必要な修正を加えて、PPT、PDF、PNGファイルとして出力することができます。

音声ファイルとスライド画像のファイルから動画を作成し、YouTubeのIZ statチャンネルにアップしました。動画の作成はVideopadを用いた手作業です。

「エビデンスの確実性と利益・害のバランス分析 – ダイアログ」(9:28) Link

「システマティックレビューにおけるAIの活用 – ダイアログ」(7:45) Link

「コクランRoB 2ツール:ITT効果とPer-protocol効果の評価の違い – ダイアログ」 (8:17) Link

「共有意思決定(SDM):患者さんとの対話を通じた最適な医療選択 – ダイアログ」(6:20)Link 医師に向けての視点で

「共有意思決定(SDM):医療者と患者の協働アプローチ – 医療利用者に向けての視点で – ダイアログ」(7:34)Link

「臨床研究のバイアスの理解:推定値への影響 – ダイアログ」(15:14) Link

これらの動画は聞き役と、説明する役の二人の対話で、話し言葉なので、スライドを見ながら聞いていると何となく要点が分かるような気になります。

NotebookLMではプロンプトの書き方で、同じソースでも異なるアウトプットになり、重点の置き方が違った内容になりますが、非常に効率化が図れます。”詳細な会話”ではなく、テキストでの回答を得て、それを保存しておくこともできます。Gammaでのスライド作成も、自分では描けないようなプロフェッショナルな画像を挿入してくれ、適切にまとめてくれ、やはり非常に効率化が図れます。

Entrustable Professional Activity (EPA)委託可能な専門的活動:医学部生、研修医、専門医

アメリカの医学教育、研修医教育、専門医教育はEPAという概念で、学習目標が設定されており、マイルストーンによって、到達目標も示されています。アセスメントの基準についても明確にされています。以前解説したことがあります。

例えば、アメリカ消化器病学会American Gastroenterological Association (AGA)と関連学会は、2014年に13のコアEPAを提示しています。

AGA 13のEPA
1. Manage common acid peptic related problems.
2. Manage common functional gastrointestinal disorder
3. Manage common gastrointestinal motility disorders
4. Manage liver diseases
5. Manage complications of cirrhosis
6. Perform upper and lower endoscopic evaluation of the luminal gastrointestinal tract for screening, diagnosis, and intervention
7. Perform endoscopic procedures for the evaluation and management of gastrointestinal bleeding
8. Manage biliary disorders
9. Manage pancreatic diseases
10. Manage common GI infections in non-immunosuppressed and immunocompromised populations
11. Identify and manage patients with noninfectious GI luminal disease
12. Manage common GI and liver malignancies, and associated extraintestinal cancers
13. Assess nutritional status and develop and implement nutritional therapies in health and disease

Rose S, Fix OK, Shah BJ, Jones TN, Szyjkowski RD: Entrustable professional activities for gastroenterology fellowship training. Gastroenterology 2014;147:233-42. doi: 10.1053/j.gastro.2014.04.038 PMID: 24954665

EPAという概念には、対象者にその業務を信頼して委託できるか=まかせられるかという概念が含まれていますので、単に知識・技能を十分習得しただけでは、不十分なこともありますし、評価法も多選択肢問題をパスすればいいというだけでは済まなくなります。指導者が判断し、一緒に業務を行う人たち、業務の対象になる人たち、360度の評価も必要になります。指導者は学習者が独立して一人で作業をできるかをさまざまなレベルで評価する必要があります。

アメリカ医科大学協会(AAMC)が作成した、レジデンシー前のコア委託可能な専門的活動(Core EPA)のひとつ、”EPA 7: 患者ケアを進めるためのクリニカルクエスチョンの作成とエビデンスの検索”を日本語に翻訳してみました。こちらのExcelのファイルです。

この図の中に、”修正のため対応が必要な態度”という欄があり、”問題に対するアプローチを考え直す、助けを求める、あるいは新しい情報を探すことをしない”、そして、”新しい情報テクノロジーを使おうとしない”、”文献のさまざまなギャップと限界を考慮すること、あるいは、出版されているエビデンスを具体的な患者ケアに適用することを拒絶する”、”医療チームと知見について議論することをしない。促されても、アウトカムおよび/あるいはプロセスを決めたり議論することをしない”という項目があります。 これらは、学部学生の段階で、修正が必要とされています。

AAMCのCore EPAの解説とリソースはこちら、EPA Toolkitsはこちらです。

また、ACGME (Accreditation Council for Graduate Medical Education) 米国卒後医学教育認定評議会はマイルストーンを提示しています。The Milestones Guidebook, The Milestones Guidebook for Residents and Fellowsなどもあります。

Microlearningマイクロラーニング

Kapp KM, Defelince RA: Microlearning: Short and sweet. 2019, ATD Press, VA, USAを紹介します。

Microlearningマイクロラーニングは、・ゲーム・クイズ・フラッシュカード・ビデオ・テキストメッセージこれらを通じて迅速で、意味のある相互作用interactionを作り出すことによって、毎日のちょっとした時間で、知識を増やし、スキルを磨くことを実現する。

学習ゴール、学習目標、学習アウトカム、相互作用、届けるメカニズムによりその内容が決まってくる。

・5分以内に消費できる一片の学習コンテンツ(Torgerson 2016)。
・自分の学習の成り行きをコントロールしながら、いつでも、どこでも学びたいという人々の希望に答えるようにマイクロラーニングが作成される(Tipton 2017)。
・中規模mesoあるいは大規模macroな学習に対比して、比較的小さな、時間が限定された学習ユニットと学習活動(Hierdeis 2007)。
・マイクロラーニングはコンテンツを短い、焦点を定めた、ひとかじり分提供する、トレーニングに対するアプローチである。効果的にするためには、毎日のワークフローに自然にフィットしなければならないし、自発的な参加を約束し、脳科学(人々はどのように実際学習するのか)に基づき、成功に必要な知識を持続的に根付かせるように調整され、究極的には目的の仕事の結果にインパクトを与える行動に駆り立てる(Dillon 2018)。
・学習に関連した活動の中で比較的短い参加を要求するものであり、典型的には数秒から20分(あるいはある場合には1時間)の長さで、コンテンツの提示、レビュー、練習、振り返り、行動を促すこと、パフォーマンスのサポート、ゴールを思い出させること、説得的メッセージ、仕事の割り振り、社会的相互作用、診断、コーチング、相互作用の管理、あるいはその他の学習に関連する方法論(Thalheimer 2017)。

「マイクロラーニングは、参加者から特定のアウトカムを引き出すために、意図的にデザインされた活動に短時間のエンゲージメントを提供する教育ユニットである」

・短いが独立している。
・ひとつのアウトカムを学習目標とする。
・自発的に参加したくなるように注意を引く。・メンタルなあるいは身体的なアクティビティーを伴う。
・意図をもってデザインされている。
・特定のアウトカムを引き出す。
・多くの場合、何かを知るというより、何かができるようにする。
・学習者、学生というより参加者。

しかし、一方でその限界を認識すべき:
・マイクロラーニングですべてができるようになるわけではない。
・深いレベルの学習を目的にすることはできない。
・マイクロラーニングだけで、専門家としての広範な知識、スキルを身に付けられるわけではない。
・より大きな学習活動の中に位置づけられるべきである。
・文脈の中で経験を通して学ぶことを可能にすることはできない。
・ばらばらの知識やスキルをつなげることはできない。

医療的介入に用いた例:
Ramachandran A, et al: Effectiveness of mobile phone messaging in prevention of type 2 diabetes by lifestyle modification in men in India: a prospective, parallel-group, randomised controlled trial. Lancet Diabetes Endocrinol 2013;1:191-8. doi: 10.1016/S2213-8587(13)70067-6 PMID: 24622367https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24622367/
糖代謝能異常の人々を対象に、最初に生活習慣の変化を促すアドバイスを受ける VS モバイルフォンで頻回に生活習慣を変える教育的で動機付けるメッセージを受ける;後者は2型糖尿病の発生を抑制した。

Nanditha A, et al: A pragmatic and scalable strategy using mobile technology to promote sustained lifestyle changes to prevent type 2 diabetes in India and the UK: a randomised controlled trial. Diabetologia 2020;63:486-496. doi: 10.1007/s00125-019-05061-y PMID: 31919539https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31919539/https://link.springer.com/article/10.1007/s00125-019-05061-y
糖尿病の発症は抑制されなかった。