AIで作成するダイアログ動画

GoogleのNotebookLMは自分で選択した情報ソース:PDFファイル、ウェブサイト、YouTubeの動画、その他をアップロードして、それらの情報に基づいて、要約を作成したり、質問に対する回答を得たり、さらに二人の”詳細な会話”の音声ファイルを作成することができます。単にソース情報の要約を作成するだけでなく、”詳細な会話”のカスタマイズで対話の内容について指示し、さまざまな課題に関するダイアログを作成することができます。

作成した音声ファイル(WAV形式)をダウンロードし、たとえば、Microsoft Wordのディクテーションのトランスクリプトからそのファイルを開いて、文字起こしすることができます。さらに、そのテキストから、Gammaでスライドを作成し、必要な修正を加えて、PPT、PDF、PNGファイルとして出力することができます。

音声ファイルとスライド画像のファイルから動画を作成し、YouTubeのIZ statチャンネルにアップしました。動画の作成はVideopadを用いた手作業です。

「エビデンスの確実性と利益・害のバランス分析 – ダイアログ」(9:28) Link

「システマティックレビューにおけるAIの活用 – ダイアログ」(7:45) Link

「コクランRoB 2ツール:ITT効果とPer-protocol効果の評価の違い – ダイアログ」 (8:17) Link

「共有意思決定(SDM):患者さんとの対話を通じた最適な医療選択 – ダイアログ」(6:20)Link 医師に向けての視点で

「共有意思決定(SDM):医療者と患者の協働アプローチ – 医療利用者に向けての視点で – ダイアログ」(7:34)Link

「臨床研究のバイアスの理解:推定値への影響 – ダイアログ」(15:14) Link

これらの動画は聞き役と、説明する役の二人の対話で、話し言葉なので、スライドを見ながら聞いていると何となく要点が分かるような気になります。

NotebookLMではプロンプトの書き方で、同じソースでも異なるアウトプットになり、重点の置き方が違った内容になりますが、非常に効率化が図れます。”詳細な会話”ではなく、テキストでの回答を得て、それを保存しておくこともできます。Gammaでのスライド作成も、自分では描けないようなプロフェッショナルな画像を挿入してくれ、適切にまとめてくれ、やはり非常に効率化が図れます。

Entrustable Professional Activity (EPA)委託可能な専門的活動:医学部生、研修医、専門医

アメリカの医学教育、研修医教育、専門医教育はEPAという概念で、学習目標が設定されており、マイルストーンによって、到達目標も示されています。アセスメントの基準についても明確にされています。以前解説したことがあります。

例えば、アメリカ消化器病学会American Gastroenterological Association (AGA)と関連学会は、2014年に13のコアEPAを提示しています。

AGA 13のEPA
1. Manage common acid peptic related problems.
2. Manage common functional gastrointestinal disorder
3. Manage common gastrointestinal motility disorders
4. Manage liver diseases
5. Manage complications of cirrhosis
6. Perform upper and lower endoscopic evaluation of the luminal gastrointestinal tract for screening, diagnosis, and intervention
7. Perform endoscopic procedures for the evaluation and management of gastrointestinal bleeding
8. Manage biliary disorders
9. Manage pancreatic diseases
10. Manage common GI infections in non-immunosuppressed and immunocompromised populations
11. Identify and manage patients with noninfectious GI luminal disease
12. Manage common GI and liver malignancies, and associated extraintestinal cancers
13. Assess nutritional status and develop and implement nutritional therapies in health and disease

Rose S, Fix OK, Shah BJ, Jones TN, Szyjkowski RD: Entrustable professional activities for gastroenterology fellowship training. Gastroenterology 2014;147:233-42. doi: 10.1053/j.gastro.2014.04.038 PMID: 24954665

EPAという概念には、対象者にその業務を信頼して委託できるか=まかせられるかという概念が含まれていますので、単に知識・技能を十分習得しただけでは、不十分なこともありますし、評価法も多選択肢問題をパスすればいいというだけでは済まなくなります。指導者が判断し、一緒に業務を行う人たち、業務の対象になる人たち、360度の評価も必要になります。指導者は学習者が独立して一人で作業をできるかをさまざまなレベルで評価する必要があります。

アメリカ医科大学協会(AAMC)が作成した、レジデンシー前のコア委託可能な専門的活動(Core EPA)のひとつ、”EPA 7: 患者ケアを進めるためのクリニカルクエスチョンの作成とエビデンスの検索”を日本語に翻訳してみました。こちらのExcelのファイルです。

この図の中に、”修正のため対応が必要な態度”という欄があり、”問題に対するアプローチを考え直す、助けを求める、あるいは新しい情報を探すことをしない”、そして、”新しい情報テクノロジーを使おうとしない”、”文献のさまざまなギャップと限界を考慮すること、あるいは、出版されているエビデンスを具体的な患者ケアに適用することを拒絶する”、”医療チームと知見について議論することをしない。促されても、アウトカムおよび/あるいはプロセスを決めたり議論することをしない”という項目があります。 これらは、学部学生の段階で、修正が必要とされています。

AAMCのCore EPAの解説とリソースはこちら、EPA Toolkitsはこちらです。

また、ACGME (Accreditation Council for Graduate Medical Education) 米国卒後医学教育認定評議会はマイルストーンを提示しています。The Milestones Guidebook, The Milestones Guidebook for Residents and Fellowsなどもあります。

Microlearningマイクロラーニング

Kapp KM, Defelince RA: Microlearning: Short and sweet. 2019, ATD Press, VA, USAを紹介します。

Microlearningマイクロラーニングは、・ゲーム・クイズ・フラッシュカード・ビデオ・テキストメッセージこれらを通じて迅速で、意味のある相互作用interactionを作り出すことによって、毎日のちょっとした時間で、知識を増やし、スキルを磨くことを実現する。

学習ゴール、学習目標、学習アウトカム、相互作用、届けるメカニズムによりその内容が決まってくる。

・5分以内に消費できる一片の学習コンテンツ(Torgerson 2016)。
・自分の学習の成り行きをコントロールしながら、いつでも、どこでも学びたいという人々の希望に答えるようにマイクロラーニングが作成される(Tipton 2017)。
・中規模mesoあるいは大規模macroな学習に対比して、比較的小さな、時間が限定された学習ユニットと学習活動(Hierdeis 2007)。
・マイクロラーニングはコンテンツを短い、焦点を定めた、ひとかじり分提供する、トレーニングに対するアプローチである。効果的にするためには、毎日のワークフローに自然にフィットしなければならないし、自発的な参加を約束し、脳科学(人々はどのように実際学習するのか)に基づき、成功に必要な知識を持続的に根付かせるように調整され、究極的には目的の仕事の結果にインパクトを与える行動に駆り立てる(Dillon 2018)。
・学習に関連した活動の中で比較的短い参加を要求するものであり、典型的には数秒から20分(あるいはある場合には1時間)の長さで、コンテンツの提示、レビュー、練習、振り返り、行動を促すこと、パフォーマンスのサポート、ゴールを思い出させること、説得的メッセージ、仕事の割り振り、社会的相互作用、診断、コーチング、相互作用の管理、あるいはその他の学習に関連する方法論(Thalheimer 2017)。

「マイクロラーニングは、参加者から特定のアウトカムを引き出すために、意図的にデザインされた活動に短時間のエンゲージメントを提供する教育ユニットである」

・短いが独立している。
・ひとつのアウトカムを学習目標とする。
・自発的に参加したくなるように注意を引く。・メンタルなあるいは身体的なアクティビティーを伴う。
・意図をもってデザインされている。
・特定のアウトカムを引き出す。
・多くの場合、何かを知るというより、何かができるようにする。
・学習者、学生というより参加者。

しかし、一方でその限界を認識すべき:
・マイクロラーニングですべてができるようになるわけではない。
・深いレベルの学習を目的にすることはできない。
・マイクロラーニングだけで、専門家としての広範な知識、スキルを身に付けられるわけではない。
・より大きな学習活動の中に位置づけられるべきである。
・文脈の中で経験を通して学ぶことを可能にすることはできない。
・ばらばらの知識やスキルをつなげることはできない。

医療的介入に用いた例:
Ramachandran A, et al: Effectiveness of mobile phone messaging in prevention of type 2 diabetes by lifestyle modification in men in India: a prospective, parallel-group, randomised controlled trial. Lancet Diabetes Endocrinol 2013;1:191-8. doi: 10.1016/S2213-8587(13)70067-6 PMID: 24622367https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24622367/
糖代謝能異常の人々を対象に、最初に生活習慣の変化を促すアドバイスを受ける VS モバイルフォンで頻回に生活習慣を変える教育的で動機付けるメッセージを受ける;後者は2型糖尿病の発生を抑制した。

Nanditha A, et al: A pragmatic and scalable strategy using mobile technology to promote sustained lifestyle changes to prevent type 2 diabetes in India and the UK: a randomised controlled trial. Diabetologia 2020;63:486-496. doi: 10.1007/s00125-019-05061-y PMID: 31919539https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31919539/https://link.springer.com/article/10.1007/s00125-019-05061-y
糖尿病の発症は抑制されなかった。

カナダの医学教育 Competency-Based Medical Education (CBME), Entrustable Professional Activities (EPA)

Royal College of Physicians and Surgeons of Canadaから2016年にコンピテンシーに基づく医学教育(Competency-Based Medical Education, CBME)に関する動画と委託可能な専門的活動(Entrustable Professional Activity, EPA)に関する動画がYouTubeにアップロードされています。短いですが、非常にわかりやすいです。

Understanding Entrustable Professional Activities (EPAs): Video

2016 by Royal College of Physicians and Surgeons of Canada.
https://youtu.be/5Ase3ETcsu0

Introduction to CBME and CBD

2016 by Royal College of Physicians and Surgeons of Canada.
https://youtu.be/pSBs9Mg-GIM