CEA alongside clinical trials II

臨床試験実施時に医療経済的分析を臨床試験に含めて行う場合のガイダンスが International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research (ISPOR) 国際医薬経済・アウトカム研究学会 より2014年に発表されている。 Ramsey SD, Willke RJ, Glick H, Reed SD, Augustovski F, Jonsson B, Briggs A, Sullivan SD: Cost-effectiveness analysis alongside clinical trials II-An ISPOR Good Research Practices Task Force report. Value Health 2015;18:161-72. PMID: 25773551

これは2005年に発表された報告の改訂版である。抄録から抜粋すると:” 臨床試験のデザイン、データ要素の選択、データベースのデザインと管理、分析、結果の報告についての推奨を2014年に改訂した。臨床試験はEfficacyではなくEffectivenessを評価し、臨床的アウトカムの測定を含むべきであり、研究対象者から医療資源の利用と健康状態効用値health state utilitiesを直接得るべきである。経済的データの収集もすべて研究の中に織り込むべきである。増分解析を治療企図アプローチを用いて行い、関連する亜群解析も補足的に行うべきである。不確実性の特徴を明らかにすべきである。論文は確立されている費用対効果分析の結果報告のスタンダードを遵守すべきである。臨床試験に伴う経済の研究は資源配分の決定をする際に臨床的効果(Efficacy)と伴に経済的価値のエビデンスを考慮する決定者のための情報として、価値のエビデンスを考えるモデル化研究のような他の評価を補足するものである。 ”

費用対効果分析の結果報告のスタンダードはCHEERSのこと。臨床試験で測定されるアウトカムがより多様化することになるのではないかと考えられる。

CHEERS statement

The Consolidated Health Economic Evaluation Reporting Standards CHEERS statement CHEERS声明ー医療経済評価における報告様式のガイダンスー は2013年に International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes (ISPOR) 国際医薬経済・アウトカム研究学会から発表された医療経済評価に関する論文の執筆ガイダンスである。Husereau D, Drummond M, Petrou S, Carswell C, Moher D, Greenberg D, Augustovski F, Briggs AH, Mauskopf J, Loder E, ISPOR Health Economic Evaluation Publication Guidelines-CHEERS Good Reporting Practices Task Force: Consolidated Health Economic Evaluation Reporting Standards (CHEERS)–explanation and elaboration: a report of the ISPOR Health Economic Evaluation Publication Guidelines Good Reporting Practices Task Force. Value Health 2013;16:231-50. PMID: 23538175白岩らの日本語訳も発表されている。

以下の項目について、望ましい執筆方法が解説されている:
タイトルと抄録:タイトル、抄録、序論:背景と目的、方法:対象集団とサブグループ状況や場所、研究の立場、比較対照、分析期間、割引率、アウトカムの選択効果の測定、選好に基づくアウトカムの測定や評価、資源消費と費用の推計、通貨・時点・換算、モデルの選択、仮定、解析方法、結果:研究で用いたパラメータ、増分費用と増分アウトカム、不確実性異質性、考察:研究結果・限界・一般化可能性・現在の知見、その他:資金源、利益相反

太字で示した項目は、医療経済的解析のデータソースとして用いられる臨床研究の臨床疫学的な視点での評価に関係する。

Cost-Effectiveness Analysis (CEA)に関する書籍

◯ Welton NJ, Sutton AJ, Cooper N, Abrams K, Ades AE: Evidence synthesis for decision making in healthcare. (Statistics in practice), 2012, Wiley.
 “This book is at heart about a fusion of ideas from medical statistics, clinical epidemiology, decision analysis, and health economics.” と書かれているくらいで、Network meta-analysisも含め、ベイズ統計学と決断分析を背景に幅広い領域について書かれている。エビデンスの統合についても十分記載されている。Chapter 7: Evidence Synthesis in a Decision Modelling Frameworkという章がある。NICEのガイダンスに沿った方法を述べ、WinBUGSについても記述している。

◯ Neumann PJ, Sanders GD, Russell LB, Siegel JE, Ganiats TG: Cost-effectiveness in health and medicine (2nd ed). 2017, Oxford University Press. 
Box 1.1にアメリカおよび国際的な医療の領域における費用対効果分析の歴史がまとめられている。2010年に”The Patient Protection and Affordable Care Act (ACA)医療保険制度改革法(通称オバマケア)がPatient-Centered Outcomes Research Institute (PICORI)患者中心のアウトカム研究所にQALYあたりの費用の閾値を用いることを禁止した、と書かれている。(Patient Protection and Affordable Care Act, 42 U.S.C. § 18001 et seq. [2010])。

◯ Edlin R, McCabe C, Hulme C, Hall P, Wright J: Cost-effectiveness modelling for health technology assessment: A practical course. 2015, Springer. 
包括的で、実用的な内容。著者はイギリス、カナダ、ニュージーランドの人たち。 相関のあるパラメータの調整についても書かれている。

◯ Baio G, Berardi A, Heath A: Bayesian cost-effectiveness analysis with the R package BCEA. 2017, Springer.
RのパッケージBCEAの作者Gianluca Baio教授(University College London)の本。

◯ Briggs A, Sculpher M, Claxton K: Decision modelling for health economic evaluation. 2006, Oxford Unversity Press. 2012, Cambridge University Press.   
前書きに、この領域の進歩が速いこと、この本に書かれている方法は、ひとつの見方に過ぎず、必ずしも正しいわけではなく、他にもよいアプローチがあるかもしれない、と書かれている。さまざまなグラフ表示が出てくる。相関のあるパラメータの調整についても書かれている。

その他:
◯ 鎌江 伊三夫編:医療技術評価ワークブック ―臨床・政策・ビジネスへの応用。2016年、じほう。
わかりやすく実例も上げながら書かれている。

医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団/編 :基礎から学ぶ医療経済評価 単行本。2014年、 じほう。

城山英明 (監修), 鎌江伊三夫 (監修), 林 良造 (監修) :医療技術の経済評価と公共政策―海外の事例と日本の針路。 2013年、じほう。


USPSTFの方針とNAMの基準

全米医学アカデミーNational Academy of Medicine 、NAM(旧全米医学研究所Institute of Medicine, IOM)のCommittee on Standards for Developing Trustworthy Clinical Practice Guidelinesは2011年にClinical Practice Guidelines We Can Trustを出版していますが、この中で信頼できる診療ガイドライン作成に必要な基準を以下の8つの領域にわたって示しています。

  1. Establishing transparancy
  2. Managmement of conflict of interest (COI)
  3. Guideline development group composition
  4. Clnical practice guideline – systematic review interssection
  5. Establishing evidence foundations for and rating strength of recommendations
  6. Articulation of recommendations
  7. External review
  8. Updating

USPSTFはU.S. Preventive Services Task Force Procedure Manualにトピックの選択から推奨作成に至るまでの方法の詳細を発表していますが、さらに、USPSTFの方針がNAMの基準をすべて満たしていることをStandards for Guideline Developmentとして発表しています。