アメリカAHRQのSHAREアプローチのツール5では数値データについてどのように説明するかすなわち数量リテラシーの課題が取り上げられています。
健康数量リテラシーHealth numeracyの低い人は量の情報の理解に困難を感じ、益Benefitsと害Risksの理解に問題があって、その結果Shared decision makingに不可欠の治療オプションの理解ができないかもしれません。実際に治療が始まっても、治療計画に従うことが困難で、結果としてより悪い医学的アウトカムになってしまいます。
数字は明確に用いましょう:
1.推定値を示して、精密さを追求しましょう。
リスクの説明の際に、”低リスク”のような記述的な言葉はやめて、たとえば、”研究ではステントを入れた100人中1人か2人でステントに血栓ができます”と言いましょう。
2.小数点あるいはパーセントのかわりに人数(頻度)を使いましょう。
たとえば、”0.13″あるいは”13パーセント”と言うかわりに、”100人中13人で”と言いましょう。
3.数値を比較する時は、分母と時間枠を同じにしましょう。
たとえば、”あなたのような女性10人中およそ6人が、この薬を飲まない場合、10年の内に骨折を起こします。この薬を飲んだあなたのような女性の10人中およそ3人が10年の内に骨折します。この薬を飲むと、あなたが骨折するチャンスはおよそ半分まで下がります。”
4.相対リスクではなく、絶対リスクを提示しましょう。
絶対リスクはひとつのグループでの健康イベントの起きる数の推定値で、より強く個人のリスクを感じさせます。たとえば、”喫煙者は一生の間に2倍脳卒中を起こします”というよりも、”1000人のたばこを吸わない人では3人が一生の間に脳卒中を起こし、1000人のたばこを吸う人は6人が一生の間に脳卒中を起こします”と言いましょう。
5.アウトカムをポジティブとネガティブの両面から説明しましょう。
たとえば、”この治療では10人に2人で副作用が起きます、そして10人に8人は副作用が起きません。”
6.あなたの患者さんがどの測定尺度‐標準かメトリックか-を使うかを見つけましょう。
たとえば、”説明はオンスとグラムとどちらを使ってほしいですか?”と尋ねましょう。
数字を意味あるものにしましょう:
多くの人々が数字の意味付けに困難を感じます。患者さんへのあなたの数字の提示の仕方が意味づけすることを手助けすることができます。
1.数字を限定する。
数字とそれらの意味を議論する時は、同時には2-3個のコンセプトに集中し、キーになる情報をハイライトしましょう。リスクとベネフィットの統計値、血糖値、用量の指示のように、正確さが必要な場合は、数字を使いましょう。
2.日常語を使う。
たとえば、”49パーセント”と言うのであれば”約半分”と言いましょう。
3.数学をする。
あなたの患者さんのために計算を実行しましょう。たとえば、患者さんに1年間のリスク率から計算することを期待するより、10年の期間でのリスクがいくつかを伝えましょう。
4.親しみのあるオブジェクトへのアナロジーと対比を用いる。
たとえば、”胆石は砂粒の様に小さいものから、ゴルフボールほどの大きさのものまであります。あなたの胆石はおよそ0.5センチメートルの大きさで、大体グリーンピースくらいの大きさです。
5.図を見せる。
たとえば、患者さんの痛みのレベルについてコミュニケートするため、Wong-Baker FACES pain scaleを用いる。
6.ティーチバックテクニックを用いる。
Using the Teach-Back Technique: A Reference Guide for Health Care Providers (Tool 6)を参照のこと。今提示した数値について患者さん自身の言葉で説明するよう頼みましょう。これによりあなたの患者さんが理解していることを確認できます。数字を含む説明用の図(グラフ、チャート、表)を使った場合は、理解をチェックすべきです。
ビジュアルエイドでリスクについてコミュニケーションする:
ビジュアルエイドは確率の数値による表現をグラフィカルに単純に表したものです。さまざまなグラフの中で、特に、アイコンの配列、バーグラフ(棒グラフ)、折れ線グラフなどがあります。文章に、良いビジュアルエイドを追加することは、患者さんに文脈に位置付けられたリスクの数字を見ることを手助けし、そうすることで単なるデータでなく、情報を提供します。
アイコン配列(ピクトグラフとも呼ばれる)は比率を示す。パイグラフは比率を示す。バーグラフ(棒グラフ)は数値を比較する。折れ線グラフは時間軸における変化を示す。
実際のグラフの例がこの後に提示されています。
ビジュアルエイドについてはPROTECTに関する投稿の中で、Hallgreenらの論文やPROTECT Benefit-Risk groupのサイトのVisualizationsのページを紹介しました。