正味の益が反転しない閾値:効果推定値とアウトカムの重要度

T個の介入があるとし、介入iの効果を介入jすなわち対照と比較したランダム化比較試験でK個のアウトカムに対する効果がリスク差で得られたとする。そこで、ペアで正味の益を比較するとする。(i, j, T, K, Lは整数)。

図1. 正味の益の反転閾値:効果推定値、アウトカムの重要度。

リスク差Eijは介入i、すなわち介入の絶対リスク(イベント率)から介入j、すなわち対照の絶対リスク(イベント率)を引き算した値とする。従って、もし、有害な事象がアウトカムの内容で、Eijがプラスの値であれば、効果は害であり、逆にEijがマイナスの値であれば、益である。もし、有益な事象がアウトカムの内容の場合は、その逆で、Eijがプラスの値であれば、益であり、マイナスの値であれば害となる。ただし、リスク差は介入の絶対リスク-対象の絶対リスクとして計算することをルールとする。

効果推定値と効果の望ましさの関係をもう一度考えてみると、リスク差Eijの値が大きくなる方が望ましい効果の場合は、有益事象がアウトカムの内容であり、逆にEijが小さい方が望ましい効果の場合は、有害事象がアウトカムの内容である。アウトカムの内容とは、測定されたアウトカム事象と言い換えてもいい。正味の益がプラスになれば望ましい効果が望ましくない効果を上回り、マイナスになれば望ましくない効果が望ましい効果を上回るようにするために、アウトカムkに対する係数Fkをアウトカムの内容が有益事象の場合は1、有害事象の場合は-1に設定する。

アウトカムkに対する重要度wkは0~100の値を設定する。最も重要なアウトカムに100を設定し、その他のアウトカムに対しては相対的な重要度を0~100の数値として設定する。アウトカムの重要度は評価者がそのアウトカムに置く価値の大きさであり、評価者の価値観によって決まるので、評価者ごとに異なる主観的なものである。もし、最も重要なアウトカムが100であるアウトカムの重要度が20に設定すると、最も重要なアウトカムはそのアウトカムの5倍重要とみなしたことになる。もし、どちらも益のアウトカムであった場合、そのアウトカムが5人に生起した価値は最も重要なアウトカムが1人に生起した価値と同じと考えたことになる。なお、Gail/NCIのオリジナルの方法では重要度を重要、中等度、重要でないの3段階で、1, 0.5, 0という値を設定する。さらに、感度分析では例えば、1,0.5,0.25/1.0,1.0,1.0/1.0,1.0,0など異なる値を設定する。

アウトカムの重要度をそれぞれアウトカムの重要度の総和で割り算して、標準化した値がwskである。標準化することによって、アウトカムの数を増やしても正味の益NBの値の絶対値は最大で100を超えることが無くなる。また、最も重要なアウトカムの重要度に対する比の値を用いることもできる。その場合は、正味の益は最も重要なアウトカムに相当する価値のアウトカムが生起した対象者の割合または人数を表すことになる。なお、アウトカムの重要度と価値は同じ意味であり、文脈により使い分けられる。

正味の益NB(Net Benefit)は図1でNBとして示す式で計算される。各アウトカムごとにFk、標準化した重要度、リスク差を掛け算した値をすべてのアウトカムについて加算し、総和を求めた値になる。効果の大きさをアウトカムの重要度で重みづけした総和と言える。ただし、望ましい効果はプラス、望ましくない効果はマイナスになるようにして総和を求める。なお、正味の益net benefitと益と害のバランス benefit-harm balanceは同じ意味である。また、Benefit-harmではなくBenefit-riskあるいはRisk-benefitという用語が用いられる場合もある。

アウトカム1~Tの中の一つ、アウトカムLの効果推定値=リスク差について、正味の益NBが正負逆転する閾値は、正味の益からアウトカムLについて、Fk、標準化した重要度、リスク差を掛け算した値を引き算して、正負を逆にし、それをアウトカムLの標準化した重要度wslで割り算することで求められる。アウトカムLについて、Fk、標準化した重要度、リスク差を掛け算した値は、介入により得られる分の効果を表している。このように閾値を求める場合、そのアウトカム以外のアウトカムに対するリスク差と重要度の値は同じのままということが前提である。

アウトカムLの重要度について、正味の益NBが正負逆転する閾値は、正味の益からアウトカムLについて、Fk、標準化した重要度、リスク差を掛け算した値を引き算して、正負を逆にし、それをアウトカムLのリスク差EijLで割り算することで求められる。この場合、上記の場合と同様、そのアウトカム以外のアウトカムに対するリスク差と重要度の値は同じのままということが前提である。

図2.正味の益が反転しない効果推定値 EijL、アウトカムの重要度wLの範囲。

正味の益が反転しない、効果推定値(リスク差)の範囲、および、アウトカムの重要度の範囲は、アウトカムLに対するリスク差EijLと閾値の大小関係から容易に知ることができる(図2)。

EijLの正味の益が反転しない範囲は、EijLが閾値より大きければ、閾値から1までの範囲が正味の益が反転しない効果推定値(リスク差)の範囲となる。逆に、EijLが閾値より小さければ、-1から閾値までの範囲が正味の益が反転しない効果推定値(リスク差)の範囲となる。

いずれの場合であれ、この範囲外の効果推定値が得られる可能性が低ければ、アウトカムLに対する効果推定値が変動したとしても正味の益が反転する可能性は低いと考えていいことになる。効果推定値の95%信頼区間とバイアスリスク、非直接性、非一貫性、出版バイアスなどを考慮しても、この範囲外の値になる可能性がほとんどないと言えるくらい低ければ、そのアウトカムに関するエビデンス総体のエビデンスの確実性は高いと判断できる。

アウトカムの重要度については、アウトカムLに対して設定した重要度wLの値が、閾値より大きい場合は、閾値から(もし閾値がマイナスの値の場合は0から)100までの範囲が正味の益が反転しないアウトカムの重要度の範囲となる。逆に、重要度wLが閾値より小さい場合は、0から閾値まで(もし閾値が100以上の場合は100まで)の範囲が正味の益が反転しない範囲となる。

重要度についても、この範囲外の値がありえない値と考えられる場合、アウトカムの重要度を変動させても、正味の益が反転する可能性は低いと考えることができる。特に、効果の大きさが小さい場合は、そのような範囲になる可能性が高くなる。アウトカムの重要度の判定は個人差があるが、その振れ幅を考慮しても正味の益が反転する可能性が低ければ、大部分の人に適用しても価値観の相違による問題は起きないであろうと考えることができる。

ここで述べた方法は、”閾値分析 “Threshold analysis“と呼ばれ(Phillippo DM 2019)、エビデンスの確実性の評価、正味の益の確実性の評価に有用と考えられる。

文献:

Gail MH, Costantino JP, Bryant J, Croyle R, Freedman L, Helzlsouer K, Vogel V: Weighing the risks and benefits of tamoxifen treatment for preventing breast cancer. J Natl Cancer Inst 1999;91:1829-46. doi: 10.1093/jnci/91.21.1829 PMID: 10547390
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10547390/

MCDAについて広く解説されている。Keeney & Raiffaの方法の実例の解説がある。

Thokala P, Devlin N, Marsh K, Baltussen R, Boysen M, Kalo Z, Longrenn T, Mussen F, Peacock S, Watkins J, Ijzerman M: Multiple Criteria Decision Analysis for Health Care Decision Making-An Introduction: Report 1 of the ISPOR MCDA Emerging Good Practices Task Force. Value Health 2016;19:1-13. PMID: 26797229
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26797229/

上記のThokala Pの報告の後半に相当し、ISPORの公式の報告として出版されている。

Marsh K, IJzerman M, Thokala P, Baltussen R, Boysen M, Kalo Z, Lonngren T, Mussen F, Peacock S, Watkins J, Devlin N, ISPOR Task Force: Multiple Criteria Decision Analysis for Health Care Decision Making-Emerging Good Practices: Report 2 of the ISPOR MCDA Emerging Good Practices Task Force. Value Health 2016;19:125-37. PMID: 27021745
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27021745/

効果推定値の不確実性から正味の益の不確実性を推定する方法。

Wen S, Zhang L, Yang B: Two approaches to incorporate clinical data uncertainty into multiple criteria decision analysis for benefit-risk assessment of medicinal products. Value Health 2014;17:619-28. PMID: 25128056
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25128056

GRADEワーキンググループの益と害のバランス=正味の益に関するコンセプトペーパー。Certainty of net benefitという考えは、USPSTFと同じで、推奨の強さを決める主要要素。Appendixに具体的な計算法が記載されている。

Alper BS, Oettgen P, Kunnamo I, Iorio A, Ansari MT, Murad MH, Meerpohl JJ, Qaseem A, Hultcrantz M, Schunemann HJ, Guyatt G, GRADE Working Group: Defining certainty of net benefit: a GRADE concept paper. BMJ Open 2019;9:e027445. PMID: 31167868
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31167868/

定量的ベネフィット・リスク分析に関するISPORの公式の報告。実際的な手順を解説。

Tervonen T, Veldwijk J, Payne K, Ng X, Levitan B, Lackey LG, Marsh K, Thokala P, Pignatti F, Donnelly A, Ho M: Quantitative Benefit-Risk Assessment in Medical Product Decision Making: A Good Practices Report of an ISPOR Task Force. Value Health 2023;26:449-460. doi: 10.1016/j.jval.2022.12.006 PMID: 37005055
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37005055/

患者の嗜好を取り入れるための枠組みに関する、規制当局のコンソーシアムの報告書。アウトカムの重要度を決める様々な方法のリストがある。

Ho M, Saha A, McCleary KK, Levitan B, Christopher S, Zandlo K, Braithwaite RS, Hauber AB, Medical Device Innovation Consortium’s Patient Centered Benefit-Risk Steering Committee: A Framework for Incorporating Patient Preferences Regarding Benefits and Risks into Regulatory Assessment of Medical Technologies. Value Health 2016;19:746-750. PMID: 27712701
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27712701/

Phillippo DM, Dias S, Welton NJ, Caldwell DM, Taske N, Ades AE: Threshold Analysis as an Alternative to GRADE for Assessing Confidence in Guideline Recommendations Based on Network Meta-analyses. Ann Intern Med 2019;170:538-546. doi: 10.7326/M18-3542 PMID: 30909295
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30909295/

Eiring Ø, Brurberg KG, Nytrøen K, Nylenna M: Rapid methods including network meta-analysis to produce evidence in clinical decision support: a decision analysis. Syst Rev 2018;7:168. doi: 10.1186/s13643-018-0829-z PMID: 30342549
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30342549/

Conflict of Interest (COI) 利益相反

Institute of Medicine (IOM), Guidelines International Network (G-I-N)のCOIに関する解説、COIへの対処法などについて、重要な箇所の原文と日本語訳です。これを読むとCOIについての理解が深まり、診療ガイドライン作成におけるCOIへの対処法が理解できると思います。

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Institute of Medicine 2009年の定義

“A set of circumstances that creates a risk that professional judgment or actions regarding a primary interest will be unduly influenced by a secondary interest” (IOM, 2009, p. 46).

「もっとも重要な一次的利害に関する専門的判断あるいは行動が二次的利害に不当に影響を受けるリスクを生じる一連の状況」

Clinical Practice Guidelines We Can Trust 2011年に引用されている。

さらにIOMの追加的説明:complementary descriptions of COI: “A divergence between an individual’s private interests and his or her professional obligations such that an independent observer might reasonably question whether the individual’s professional actions or decisions are motivated by personal gain, such as financial, academic advancement, clinical revenue streams, or community standing” 

「独立した観察者が、個人の専門的行動あるいは決断が経済的、アカデミックな昇進、臨床的収入の流れあるいは社会的地位のような個人的獲得利益に動機づけられているかどうかについて疑問を抱くかもしれないような、個人の私的利害とその専門家としての義務の間の相違」

さらにSchünemann HJ,らの解説:

“A financial or intellectual relationship that may impact an individual’s ability to approach a scientific question with an open mind” (Schünemann et al., 2009, p. 565).

「開かれた心で科学的疑問にアプローチする個人の能力に影響を与えるかもしれない経済的あるいは知的関係」

さらに知的COIについての説明:

intellectual COIs specific to CPGs are defined as “academic activities that create the potential for an attachment to a specific point of view that could unduly affect an individual’s judgment about a specific recommendation” (Guyatt et al., 2010, p. 739)

「診療ガイドラインに特異的な知的COIは、特異的な推奨に関する個人の判断に不当に影響しうる特異的な見解への執着の可能性を生み出すアカデミックな活動と定義される」

G-I-N 2016の定義

G-I-N 2016の定義はIOMの追加的説明と同じ内容である:

“A divergence between an individual’s private interests and his or her professional obligations such that an independent observer might reasonably question whether the individual’s professional actions or decisions are motivated by personal gain, such as direct financial, academic advancement, clinical revenue streams, or community standing.”

ーーーーー 第4章(75~107ページ)

1. Establishing Transparency 

1.1 The processes by which a CPG is developed and funded should be detailed explicitly and publicly accessible.

2. Management of Conflict of Interest (COI) 

2.1 Prior to selection of the guideline development group (GDG), individuals being considered for membership should declare all interests and activities potentially resulting in COI with development group activity, by written disclosure to those convening the GDG: 

•    Disclosure    should    reflect    all    current    and    planned    commercial (including services from which a clinician derives a substantial proportion of income), noncommercial, intellectual, institutional, and patient–public activities pertinent to the potential scope of the CPG. 

2.2 Disclosure of COIs within GDG: 

•    All COI  of each GDG member should be reported and discussed by the prospective development group prior to the onset of his or her work. 

•    Each panel member should explain how his or her COI could influence the CPG development process or specific recommendations. 

2.3 Divestment 

•    Members of the GDG should divest themselves of financial investments they or their family members have in, and not participate in marketing activities or advisory boards of, entities whose interests could be affected by CPG recommendations. 

2.4 Exclusions 

•    Whenever possible GDG members should not have COI. 

•    In some circumstances, a GDG may not be able to perform its work without members who have COIs, such as relevant clinical specialists who receive a substantial portion of their incomes from services pertinent to the CPG.

•    Members with COIs should represent not more than a minority of the GDG. 

•    The chair or cochairs should not be a person(s) with COI. 

•    Funders should have no role in CPG development.

3. Guideline Development Group Composition 

3.1 The GDG should be multidisciplinary and balanced, comprising a variety of methodological experts and clinicians, and populations expected to be affected by the CPG. 

3.2 Patient and public involvement should be facilitated by including (at least at the time of clinical question formulation and draft CPG review) a current or former patient, and a patient advocate or patient/consumer organization representative in the GDG. 

3.3 Strategies to increase effective participation of patient and consumer representatives, including training in appraisal of evidence, should be adopted by GDGs.

4. Clinical Practice Guideline–Systematic Review Intersection 

4.1 Clinical practice guideline developers should use systematic reviews that meet standards set by the Institute of Medicine’s Committee on Standards for Systematic Reviews of Comparative Effectiveness Research. 

4.2 When systematic reviews are conducted specifically to inform particular guidelines, the GDG and systematic review team should interact regarding the scope, approach, and output of both processes.

1. 透明性の確保

1.1 CPGの作成と資金調達の過程は明確、詳細で公衆がアクセスできるようにすべきである。

2. 利益相反(COI)の管理

2.1 ガイドライン作成グループ(GDG)の選任に先立ち、参加を考慮中の個人は作成グループの活動とCOIを生じうるすべての利益と活動を招集者に書面で申告すべきである。

・申告は現在の、そして計画されている、CPGの想定されるスコープに関連する商業的(そこから収入のかなりの部分を得ている業務・サービスも含む)、非商業的、知的、患者‐公衆に関する活動のすべてを反映すべきである。

2.2 GDG内でのCOIの申告:

・GDGメンバーのすべてのCOIはその仕事を開始する前に報告され、将来の作成グループによって議論されるべきである。

・各パネルメンバーはそのCOIが診療ガイドライン作成プロセスあるいは個別推奨にどのように影響しうるかを説明すべきである。

2.3 (株式などの)処分

・GDGメンバーは各自および家族が保有する経済的投資を自ら売却・処分すべきで、その利益が診療ガイドラインの推奨により影響を受けうる企業体のマーケティングあるいはアドバイザリーボードに参加すべきではない。

2.4 除外規定

・可能な限りGDGメンバーはCOIを有するべきではない。
・いくつかの状況では、メンバーは診療ガイドラインに関連のあるサービスから収入のかなりの部分を得ている関連のある臨床専門家のような、COIを有するメンバーなしでその仕事を遂行できないかもしれない。
・COIを有するメンバーはGDGの少数派にとどめるべきである。
・ 議長あるいは副議長はCOIを有する者であってはならない。
・資金提供者はCPG作成で何らかの役割を持ってはならない。

3. ガイドライン作成グループの構成

3.1 GDGは方法論の専門家、臨床家、そして診療ガイドラインで影響を受けるであろう集団などさまざまな人々から構成され、多くの専門分野のバランスがとれた構成にすべきである。

3.2 患者と公衆の参画は現在の患者あるいは疾患経験者、患者支援者あるいは患者・医療利用者団体の代表者をGDGに含むことで(少なくともクリニカルクエスチョン作成時点と診療ガイドライン草稿のレビューの時点で)強化すべきである。

3.3 エビデンスの批判的吟味のトレーニングを含む、患者と医療利用者の代表の効果的な参加を増やす戦略がGDGにより採用されるべきである。

4. 診療ガイドライン-システマティックレビューの交差

4.1 診療ガイドライン作成者はInstitute of Medicineの比較効果研究のシステマティックレビューのスタンダードにより設定された基準を満たすシステマティックレビューを用いるべきである。

4.2 システマティックレビューが特定のガイドラインに情報を与えるために特異的に実施される時は、GDGとシステマティックレビューチームは両者のスコープ、アプローチ、そしてアウトプットについて協働すべきである。

文献

IOM. 2009. Conflict of interest in medical research, education, and practice. Edited by B. Lo and M. J. Field. Washington, DC: The National Academies Press, USA.

Guyatt G, Akl EA, Hirsh J, Kearon C, Crowther M, Gutterman D, Lewis SZ, Nathanson I, Jaeschke R, Schünemann H: The vexing problem of guidelines and conflict of interest: a potential solution. Ann Intern Med 2010;152:738-41. PMID: 20479011

Schünemann HJ, Osborne M, Moss J, Manthous C, Wagner G, Sicilian L, Ohar J, McDermott S, Lucas L, Jaeschke R, ATS Ethics and Conflict of Interest Committee and the Documents Development and Implementation Committee: An official American Thoracic Society Policy statement: managing conflict of interest in professional societies. Am J Respir Crit Care Med 2009;180:564-80. PMID: 19734351


G-I-Nの9つの原則

1.ガイドライン作成者は直接的なCOIあるいは関連のある間接的COIを有する者をメンバーに含まないために可能な限り努力すべきである。
2.COIの定義とその管理は、専門性あるいは代表しているステークホルダに関わらず、ガイドライン作成グループの全員に適用され、これはパネルが構成される前に決められるべきである。
3. ガイドライン作成グループは利害申告に標準化されたフォームを用いるべきである。
4.ガイドライン作成グループはすべての直接的な経済的および間接的COI含む利害を公開すべきで、これらはガイドライン利用者が容易に閲覧できるようにすべきである。
5.ガイドライン作成グループのすべてのメンバーはグル―プの会議のたびにそして定期的に(例えば、ガイドライン作成グループのにいる間は1年ごとに)利害の変更について申告し更新すべきである。
6.ガイドライン作成グループの議長は直接的あるいは関連のある間接的COIを有するべきではない。議長の直接的あるいは間接的COIが避けられない場合、ガイドラインパネルをリードするCOIのない副議長を任命すべきである。
7.関連のあるCOIと特異的な知識あるいは専門性を持つ専門家は個々のトピックの議論への参加を許可しうるが、意見を求められる委員の間で適切なバランスがとられるべきである。
8.推奨の方向と強さを決めるガイドライン作成グループのメンバーは誰も直接的な経済的COIを有するべきではない。
9.統括委員会はCOIに関連した規則の作成と実行に責任を持つべきである。

補足:

1-.G-I-Nはそれが実際的でない場合に、例外が必要なことを認識しているが、そのような問題がこの原則の重要性を減少させるものではない。パネルメンバーがCOIを有する場合、COIを有するメンバーがガイドラインパネルで少数派になるように、そしてガイドライン作成者はCOIを有するメンバーを含める理由についてそしてCOIの管理について透明性を確保すべきである。
4-.COIはさまざまな設定のさまざまなレベルで起きるので、この開示の部分では診療ガイドライン作成グループはすべての特異的な金銭的価値のあるものを開示すべきである。もしわかるのであれば、実際のあるはおおよその金額を報告することは透明性を高める。開示のレジストリーを使うことが可能である。
6-.推奨の向きと強さに影響する場合は関連のあるCOIが存在する。そのようなCOIがない副議長の例は推奨の向きと強さに関係のある利害を持たない方法論専門家がある。
-7.いくつかの設定においては、この役割を満たせる者は診療ガイドライン作成グループの投票するあるいは投票しないメンバーではない専門的アドバイザーと考えてもよい。
-8.これらのメンバーはガイドライン作成の時点に参加すべきではない。彼らは、推奨の方向と強さに関する議論の場にはいないこと。
-9.統括委員会は論争になる問題に対処すべきで、診療ガイドライングループの議長に誰が投票し、だれが投票しないメンバーか、そして専門的アドバイザーとしてだれを指名するかについてアドバイスすべきである。

文献:

Schünemann HJ, Al-Ansary LA, Forland F, Kersten S, Komulainen J, Kopp IB, Macbeth F, Phillips SM, Robbins C, van der Wees P, Qaseem A, Board of Trustees of the Guidelines International Network: Guidelines International Network: Principles for Disclosure of Interests and Management of Conflicts in Guidelines. Ann Intern Med 2015;163:548-53. PMID: 26436619


低いレベルのCOI (排除なし)

直接的な経済的COIなし
間接的な経済的COなし
直接的な知的COIなし
-トピック領域で推奨を発表したことが無い
-違うトピック領域ではガイドライン作成をしたことがある

対応:全面的参画

中等度のレベルのCOI (部分的排除)

直接的経済的COI
-ガイドラインと関係のないトピック領域で雇用主への研究費を企業から受けている
-ガイドラインに直接関係のあるトピック領域で非営利組織(例えば、AHRQ、NIHなど)から資金を受けている

個人的な経済的COI
-製薬企業から近親者が資金提供を受けているが、ガイドラインのトピックとは関係がない。

直接的知的COI
– 別の組織のために同じガイドライントピックで仕事をしたことがある

対応:議論には参加するが、パネル、著者、投票には参加しない。

高いレベルのCOI(完全排除)

直接的な経済的COI

-講演、株式、ボードメンバー
-近親者がガイドラインに直接関係のある製品について製薬企業から金銭を受け取る、あるいは受け取ったことがある

対応:拒絶

2015年Guidelines International Network (G-I-N)でのプレナリーセッションでのGRADE working groupのHolger SchunemannとAmerican College of Phyisicians (ACP)のAmir Quaseemの発表スライド。

RISmedを用いたPubMed検索

RISmedはPubMed検索のためのRのパッケージです。作者はStephanie Kovalchik氏です。ASReview https://asreview.nl/ を用いた文献選定の際には、Title, Abstractのデータを用います。書誌情報と合わせて、これらのデータを含むExcelファイル、またはCSVあるいはRISファイルを用意する必要があります。その際に、RISmedを使うのがひとつの方法です。

PubMedではGETメソッドで直接データベースにアクセスして、検索結果をダウンロードできるe-utilitiesというサービスがあります。MeSHへのAutomatic Term Mappingは適用されません。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK25501/

それを利用するRのパッケージです。pmSearchも同じサービスを利用しています。

RISmedとtcltk2のパッケージをThe Comprehensive R Archive Network (CRAN)(https://cran.r-project.org/)からRにインストールしておきます。tcltk2は検索結果をCSVファイルとして保存する際のインターフェースとして用います。
Stephanie Kovalchik: RISmed https://cran.r-project.org/web/packages/RISmed/index.html
Philippe Grosjean: tcltk2 https://cran.r-project.org/web/packages/tcltk2/index.html

パッケージがまだインストールされていない場合は、以下のスクリプトをRで実行してください。
#Install the packages.
packneed=c(“RISmed”,”tcltk2″);current=installed.packages();addpack=setdiff(packneed,rownames(current));url=”https://ftp.yz.yamagata-u.ac.jp/pub/cran/”;if(length(addpack)>0){install.packages(addpack,repos=url)};if(length(addpack)==0){print(“Already installed.”)}

以下のRでスクリプトを実行すると検索結果をCSVファイルとして保存できます。SearchWordsと言う変数に検索式search queryを格納しますので、””で囲んであるところを書き換えて使用してください。すべてを選択して、実行すると、ファイル保存のダイアログまで実行されます。ResultsData=EUtilsGet(Results, type=”efetch”, db=”pubmed”)の実行に時間がかかります。

保存したCSVファイルを直接開くのではなく、Excelを起動して、データメニューからテキストまたはCSVファイルからインポートします。元のファイルはUTF-8でエンコードされており、Shift JISがデフォルトのExcelでは文字化けするので、そのような手順を取ります。ファイル保存の際は.xlsxにすることもできます。

また、CSVファイルはテキストファイルなので、Notepad++ https://notepad-plus-plus.org/ などで一度開いて、エンコーディングをUTF-8-BOMに変換するとExcleで直接開いても文字化けしません。

図 Excleで取り込んで.x.sxファイルとして保存したPubMed検索結果。

以下にR用のスクリプトを示します。
library(“RISmed”)
library(“tcltk2”)

#Make a search query for PubMed. Write your query in ” “.

SearchWords=”(junior doctor OR young doctor OR resident physician OR intern) AND mindfulness AND humans[mh] AND (english[la] OR japanese[la]) AND hasabstract[tw] AND 2024[dp]”

#Connect and retrieve a list of PubMed IDs. You can change retmax and set years asmindate=2000, maxdate=2024, retmax=2000

Results=EUtilsSummary(SearchWords, type=”esearch”, db=”pubmed”, retmax=2000)

#Show the number of citations retrieved and get title, abstract and other data. This step takes time.

QueryCount(Results)
ResultsData=EUtilsGet(Results, type=”efetch”, db=”pubmed”)

#Make publication year list.

year=YearEntrez(ResultsData)

#Make a list of authors (Last name + initials) for each citation and a list of reference id (first author + year).

au=Author(ResultsData)
refn=length(au)
auv=rep(“”,refn)
refidv=rep(“”,refn)
for(i in 1:refn){
authors=cbind(au[[i]]$LastName,au[[i]]$Initials)
ma=nrow(authors)
authors[1,]
paste(authors[1,1],authors[1,2])

aul=””
for(j in 1:ma){
aut=paste(authors[j,1],authors[j,2])
aul=paste(aul,aut,sep=”, “)
}
aul=substr(aul,3,nchar(aul))
auv[i]=aul
refidv[i]=paste(authors[1,1],authors[1,2],year[i])
}

#Make citation list. No formatting. Including DOI information.
refer=Citations(ResultsData)

cite=rep(“”,refn)
for(i in 1:refn){
cite[i]=refer[[2]][[i]]
}

#Create a data frame of PMID, Reference_ID,Citation,Year, Title,Abstract. Citation format is not modified.

pubmed_data=data.frame(‘PMID’=PMID(ResultsData),’Reference_ID’=refidv,’Citation’=cite, ‘Year’=YearEntrez(ResultsData), ‘Title’=ArticleTitle(ResultsData), ‘Abstract’=AbstractText(ResultsData))

#Save the frame work as a CSV file with a save file dialogue. Add file extension “.csv”.

filnam=tclvalue(tkgetSaveFile(initialfile=”export.csv”,filetypes=”{{CSV Files} {.csv}} {{All files} *}”));if(filnam!=”.csv”){write.csv(pubmed_data,filnam,row.names=FALSE)}

#Do not open the file directly to avoid character encoding trouble. Launch Excel, then from Data menu use import text/csv file.
#The saved file is a text file with UTF-8. You can change encoding from UTF-8 to UTF-8-BOM using Notpad++, and you can directly open the file with Excel without garbles.

ASReview(エイエスレビュー)を用いた文献選定

システマティックレビューの際には、Clinical Question (CQ), Healthcare Question (HcQ), Health Question (HQ)に回答するために必要な文献を検索しますが、数百、数千という数の候補文献から、目的に合う文献を選定する作業は時間と労力を要します。

Large Language Model (LLM)を用いたArtificial Intelligence (AI)で、例えばChatGPT turboが有用だという報告もありますが、現時点では、ハルシネーションの問題など、全面的に頼れるところまで来ていないと思います。

一方で、機械学習で標的文献サンプルRelevantとそれ以外Irrelevant文献を分類する方法を用いたASReviewは高性能で時間と労力がセーブできます。実際の文献選定のプロセスを支援する方式です。

ASReviewの使い方の解説を書いたので試してみてください[2024.11.23 Exportについての解説を追加しました]→ASReviewを用いた文献検索 PDF ASReviewへのリンクは文献欄に付けてあります↓

ASReviewはPythonというプログラミング言語を用いていますが、ユーザインタフェースはブラウザで、非常に使いやすくなっています。また、データ管理はクラウドではなく、ローカルなので、自分の作成したデータの漏洩の心配はありません。

文献
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ASReview  https://asreview.nl/

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