AHRQのSHAREアプローチツール

アメリカAgency for Healthcare Research and Quality (AHRQ)のSHAREアプローチについてはすでに紹介しました。2016年からアメリカの医療者を対象にShared Decision Makingに関するワークショップを開催していますが、それと関連したカリキュラムツールが9つ発表されています。

Tool 1: Essential Steps of Shared Decision making: Quick Reference Guide.
SHAREアプローチと9つのキーポイント。PDF

Tool 2: Essential Steps of Shared Decision making: Expanded Reference Guide with Sample Conversation Starters.
最初の対話の始め方。PDF

Tool 3: Overcoming Communication Barriers With Your Patients: A Reference Guide for Health Care Providers.
コミュニケーションバリアを克服する方法。PDF

Tool 4: Health Literacy and Shared Decision making: A Reference Guide for Health Care Providers.
医療・健康リテラシー、コミュニケーションの課題。PDF

Tool 5: Communicating Numbers to Your Patients: A Reference Guide for Health Care Providers.
数値データについてどのように説明するか。PDF

Tool 6: Using the Teach-Back Technique: A Reference Guide for Health Care Providers.
理解を確認するためのティーチバックの方法。PDF

Tool 7: Taking Steps Toward Cultural Competence: A Fact Sheet.
文化・言語の相違による問題を克服する方法。PDF

Tool 8: Putting Shared Decision making Into Practice: A User’s Guide for Clinical Teams.
チームでの取り組み方。PDF

Tool 9: Achieving Patient-Centered Care with Shared Decision making: A Brief for Administrators and Practice Leaders.
管理者、リーダーへのまとめ。PDF

これらは非常に有用です。引用文献はMEDLINE収載されていないものも含まれています。HTML版、PDFの巻末にそれぞれリストが付けられています。なお、これらのツールの引用文献を見ると、2014年までになっています。引用文献以外のリンクも本文中につけられています。

Shared decision makingの論文やこれらのツールなどを読んでいくと、”share”という概念が一番重要な気がしてきます。”共有する”です。時間を、場所を、体験を、考えを、理解を、認識を、決断を、意思決定を…共有する。病気がよくなるという体験を共有することができれば。。。

SDM-Q-9 / SDM-Q-Doc

The 9-item Shared Decision Making Questionnaireというのが作られています。国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 在宅医療・地域医療連携推進部の先生方が翻訳された日本語版もあります。診療に関しては2012年、2015年、在宅ケアに関しては2019年に翻訳されています。各項目について6段階で回答し集計するようです。shared-decision-making.orgのサイトで紹介されています。

International Shared Decision Making Society

International Shared Decision Making (ISDM) Society は2018年に発足したそうです(Web site)。

10th International SHARED DECISION Making Conference が2019年7月に開催されるそうです。

3名のキーノートスピーカーは、カナダCIHR’s Institute of Indigenous Peoples’ Health (IIPH) の Scientific Directorである Carrie Bourassa, PhD 、カナダOttawa大学、 Faculty of Health Sciences、 School of Nursingの Claire Ludwig, RN PhD(c) 、アメリカMayo Clinicの内科教授でアメリカAHRQの Center for Evidence and Practice Improvement のSenior Adviserでもある Victor M. Montori, MD です。

Panel Speakersとしては、 世界で初めて優先度の設定に患者さんが参加したランダム化比較試験をリードしたカナダモントリオールの家庭医であるAntoine Boivin, MD PhD 、研究におけるPatients-Usersとのコラボレーションの評価、医療提供者の教育、などの活動をしているカナダケベックの Maman Joyce Dogba, MD PhD 、Cystic fibrosisと1型糖尿病があり肺移植、肝移植を受けた経験のあるカナダモントリオールの患者コーディネータである Alexandre Grégoire 、そして、アメリカワシントンの Patient-Centered Outcomes Research Institute (PCORI) で Dissemination and Implementation program の  Senior Program Officer である Ethan N. Chiang, PhD が紹介されています。

これらのメンバーの多様性は驚くほどです。日本にいるとこのような世界の動きがなかなか伝わってきません。”国際協働意思決定学会”なんですが、ほかの領域も含め、その”国際”にどのようにかかわっていくかよく考える必要があります。日本は国際的な貢献をしたいとみんなが思っているはずですが、さまざまな領域でサークルの中に入れてもらえるように、普段から仲間を作っておく必要があります。

そのためには自分の頭で考えることが一番重要で、同じことを考えている人が、周りにいなくても、たとえ日本にいなくても、ほかの国には必ずいると思うべきだと思います。

診療ガイドライン作成への患者・市民の参加状況

2017年に発表された論文です。

2011年のInstitute of Medicine (IOM)の”CPG we can trust”では患者・市民がガイドラインパネルに参加すること、CPGのドラフトに対して患者・市民からのインプットを求めることを推奨している。しかし、実際にはそれが十分には行われていない。患者市民の参加は、次のような点で必要である:
1.ガイドラインの優先すべき事項を決めること。
2.新しいトピックを紹介すること。
3.重要な対象者とアウトカムを同定すること。
4.知見が意味があるかについて情報を与えること。
5.ケアに対する全人的アプローチを促進すること。
6.推奨が患者の価値観とどのように関係するかを評価すること。
7.わかりやすい表現を用いたバージョンを作成することを求めること。

Armstrong MJ, Bloom JA: Patient involvement in guidelines is poor five years after institute of medicine standards: review of guideline methodologies. Res Involv Engagem 2017;3:19. PMID: 29062544