交絡因子Confounders

疫学Epidemiologyと臨床疫学Clinical Epidemiologyは同じではありません。前者の方が歴史が長く、非常に奥が深い領域です。Evidence-Based Medicine (EBM)に興味を持って、研究の内的妥当性の評価、いわゆる批判的吟味Critical appraisalを学んだとしても、疫学の奥深さにはなかなか到達できないと思います。

Rothman KJ, Greenland S, Lash TL: Modern Epidemiology (3rd ed.) 2008 Lippincott Williams & Wilkins. PA, USA.のは発刊されてから10年以上経っていますが、今でも非常に優れた疫学のテキストブックだと思います。このChapter 9. Validity in Epidemiologic Studies. Rothman KJ, Greenland S, Lash TLではValidity of Estimation推定値の妥当性、Confounding交絡、Selection Bias選択バイアス、Information Bias情報バイアス、Generalizability一般化可能性について書かれています。

交絡因子は曝露/介入ともアウトカムとも関連のある因子として認識されていると思います。例えば、飲酒者と非飲酒者で口腔癌の発症を比較する場合、飲酒する人は喫煙する人が多く、喫煙は口腔癌のリスクファクターであり、喫煙は飲酒と口腔癌発症発症の両方に関連があるため、交絡因子であり、飲酒の口腔癌発症への効果を歪めることになります。

Counterfactual反事実の対照を設定できない限り、対照群と暴露群の比較では交絡の影響を考慮することが必須だと言えます(最後の追加を見てください)。

Rothman KJらは上記の第9章で、交絡因子については3つの基準Criteriaがあることを述べています(図1)。

図1.交絡因子の3基準。

さらに、これらの3つの特徴が交絡因子の定義として誤解されることがあること、ここれらの基準が満たされても必ず交絡因子と言えるわけではないことを指摘しています。

アウトカムの原因となる外部因子と関連があり、その代理となりうる因子も交絡因子と呼ばれる。すなわち、代理交絡因子Surrogate confounderが単に交絡因子と呼ばれることも多いと述べられています。例えば、多くの研究で年齢が交絡因子として取り扱われていますが、年齢は代理交絡因子の代表的なものです。加齢によって起きる、細胞の変異の蓄積、組織の損傷の蓄積などが疾患発症(アウトカム)の原因であって、年齢自体が疾患発症を引き起こすわけではないということです。

この3条件についての彼らの記述をリストアップしてみます:

・交絡因子、代理交絡因子のいずれでも、交絡因子候補として扱っていいが、研究下の暴露のそのレベルで危険因子として作用するものでなければならない。
・データで認められる交絡因子候補とアウトカムの関連は交絡があるかどうかを見極めるガイドになるが、見かけ上の関連でなく、実際の関連でなければならない。
・交絡因子候補とアウトカムの関連を知るには外部のエビデンス、すなわち事前の知識Prior knowledgeが必要になり、特に小規模な研究の場合はそうである。
・しかしながら、外部のエビデンスの限界に注意が必要である。
・コホート研究では原集団Source populationは研究コホートになり、測定誤差が無ければ、研究コホートで暴露と関連のある因子は交絡因子と考えてよい。
・ランダム化比較試験であれば交絡が起きないとは言えない。小規模な試験の場合は大きくなりやすく、大規模な試験であっても介入のアドヒアランスが悪い場合、脱落が多い場合は交絡が起きやすい。
・症例対照研究では原集団の内、ケースとなる集団で、暴露と交絡因子の候補の関連があるはずである。対照群が十分大きく、選択バイアス・測定誤差が無ければ、研究データから交絡をチェックできるが、一般的には暴露と交絡因子の候補との関連を適切に推定できないかもしれない。(Bias analysisが必要)。
・交絡因子が暴露よりも先行Precedeしている。
・交絡因子がアウトカムより先行している。
・もし、交絡因子候補が暴露の結果であり、その結果がアウトカムに関連している場合=中間因子の場合、交絡因子として解析しないで、中間因子として解析する必要がある。
・3条件が満たされる交絡因子が同定できた場合でも他に未知の交絡因子があるかもしれない。
・未知の交絡因子は解析できない。
・未知の交絡因子の効果が混ざり合った結果がプラスマイナス0になることもありうる。
・条件によっては、未知の交絡因子の効果を暴露の効果と取り違える可能性もある。

さて、バイアスや交絡因子あるいは交絡という用語の使い方は使う人によってさまざまであることが指摘されています。Schwartz Sらはこの投稿の最後に示す論文で、Internal validity, Source population, Causal effect, Actual effect of exposure, Bias (i.e., invalidity)についての定義を示したのち、”Confounding, selection bias, and information bias are categories of bias thus defined. What unites them is their consequence—what they do to the study results. They each create noncomparability, which prevents the identification of the true causal effect the exposure had on the exposed in the source population.”「交絡、選択バイアス、情報バイアスは、このように定義されたバイアスのカテゴリーである。これらのバイアスをまとめているのは、その結果、すなわち研究結果に何をもたらすかということである。これらのバイアスはそれぞれ非比較可能性を生み出し、暴露が原集団の被暴露者に与えた真の因果関係を特定することを妨げる。」と述べています。

異なる視点、異なる分野での異なる考えなどを知ることがとても重要に思えます。

文献:
Rothman KJ, Greenland S, Lash TL: Modern Epidemiology (3rd ed.) 2008 Lippincott Williams & Wilkins. PA, USA.

Schwartz S, Campbell UB, Gatto NM, Gordon K: Toward a clarification of the taxonomy of “bias” in epidemiology textbooks.  2015;26:216-22. doi: 10.1097/EDE.0000000000000224 PMID: 25536455

追加:

効果測定値Measures of effect関連測定値Measures of association
集団と暴露以外は同じ反事実集団を比較する。集団と暴露を受けていない異なる人々の異なる集団を比較する。
効果effectと関連associationを使い分けています。本当の値と研究結果で得られた値と考えてもいいと思います。

2つの集団間の差が見られ、これら2つの測定値、すなわち効果測定値と関連測定値、が異なる場合、我々は、関連associationが交絡しているconfounded、または交絡が関連に存在していると言う。  これら2つの測定値が同じであれば、交絡は存在しないと言う。

交絡因子とは、関連性の測定値と、反事実counterfactulalの理想を用いて得られるであろう効果の測定値との間の差の全部または一部を説明するか、または作り出す因子(暴露、介入、治療など)である。

PubMed のSearch Details

Legacy PubMedでは、検索結果が表示される際に、右サイドバーにSearch Detailsが表示されており、すぐ確認することができましが、現在のPubMedでは、Advanced Searchのページに移動しないとSearch Detailsを見ることができません。

PubMedのUser Guideではいろいろなトピックが取り上げられていますが、この中のI’m not finding what I need. How does a PubMed search work?にSearch Detailsに関する説明があります。以下の様に書かれています。

”検索語句がどのように解釈されたかを確認するには、Advanced SearchページのHistoryの下にある各検索式Queryで得られるSearch Detailsを確認してください。検索トピックに対して正確でないと思われる翻訳を報告したい場合は、その情報をNLMヘルプデスクに電子メールで送ってください。”

検索した後、検索式を書き込むフィールドのすぐ下の一番左にある、AdvancedをクリックするとAdvanced Searchのページが開かれます。

図1.PubMedで検索語Advancedのリンクをクリックすると、Advanced Searchのページが開かれる。

ここで、History and Search Detailsの下にある、Details下の>をクリックするとSearch Detailsが表示されます。

図2.PubMedで検索後Advancedのリンクをクリックすると、Advanced Searchのページが開かれHisory and Search Detailsに検索式が表示されている。

例えば、(bias OR biases) AND (confounding OR confounder OR confounders) AND (definition OR definitions) AND review[pt] AND (english[la] OR japanese[la])という検索式で検索をすると、今日の時点では、231件が引き出されます。この検索式のSearch Detailsは図3のとおりです。元の検索式とはかなり異なっていることがわかります。すなわち、通常のPubMed検索では、Automatic Term Mapping (ATM)が作動して、入力した検索式そのままではなく、シソーラスからMeSH語句の参照も行われ、漏れが少ないより広範な検索が行われるようになっています。この点では、Legacy PubMedと同じです

図3.用いた検索式の下に、Search Detailsが表示される。この部分を選択してコピーすることができる。

一方で、pmSearchで利用している、PubMedのE-utilitiesを使って、同じ検索式を直接PubMed Databaseに送信して、結果を得る方法では、133件しか、返ってきません。詳細は省略しますが、以下のスクリプトのsqueryの変数に検索式が格納されています。pmSearchでは、これをJavaScriptで送信して、検索結果を得ています。

“https://eutils.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/eutils/esearch.fcgi?db=pubmed&retmode=json&retmax=10000000&sort=’pub+date’&term=”+squery;

この場合は、ATMは作動しないので、検索式の条件に合致する文献のみが引き出されます。

さて、pmSearchではHow many?でE-utilitiesを使った場合に引き出される文献数をあらかじめ確認できます。また、Search in PubMedでPubMedが開かれ、PubMedの通常の検索が行われます。この2つの文献数が異なる場合、普通は前者の方が少なくなりますが、ATMの作動した結果と同じ結果が欲しい時は、次のような方法で対処できます。Search in PubMedで検索して、Advancedをクリックして、Advanced Searchのページを開き、Detailsの検索式をコピーして、Search queryのフィールド(下から2番目のフィールド)に貼り付けて、One Action Retrievalをクリックして検索結果を得るという方法を使うことができます。こうすることで、ほぼ同じ検索結果が得られます。そして、Recordをクリックして、文献リストの表を表示して、以後の作業を進めることができます。ほぼというのは、まったく同じ結果が得られない場合もありうるという意味です。

また、PubMedで検索後、SaveからSelection:はAll results、Format:はPubMedを選んで、Create fileをクリックして、ファイルとしてダウンロードして、そのファイルをpmSearchの下の方にあるRead MEDLINEから開いて読み込むこともできます。現在のPubMedでのPubMed形式は、Legacy PubMedでのMEDLINE形式と同じ形式です。内容はテキストファイルです。

図5.PubMed検索結果をファイルとしてダウロードする。

PubMedでの検索結果はデフォルトでSorted by: Best matchになっているので、検索式と関連が大きいと判定された文献が上位に表示されます。これを新しい順に変えたい場合は、検索式を書き込むフィールドの下の右に法にあるDisplay optionsをクリックし、Sort byをMost recentに変更します。

図6.Display optionsで文献の表示順序を変更。

pmSearchは管理人が作成したPubMed検索用のウェブツールです。

Googleスプレッドシートを使ってPubMedからダウンロードした文献を管理する

前回の投稿「文献管理・選定作業のためのExcelの使用法」では主にMicrosoft Excelを用いる操作について紹介しましたが、Googleスプレッドシートを使っても同じことができます。Googleのアカウントを設定して、GmailやGoogleドライブ使っている人は多いと思います。Excelで作成したファイルをGoogleスプレッドシートでそのまま開くことができます。Chrome BookやiPad、Android OSのタブレットでも動くかもしれません。

ファイルを共有して複数の人が共同で作業するには、OneDrive、Googleドライブ、DropBox、その他のクラウドサービスが使えますが、今回紹介する方法は共同作業に向いているかもしれません。

解説のビデオを作りました。音声なしで、説明がテロップで出てきます。

文献管理・選定作業のためのExcelの使用法

電子ファイル化が進んだ科学論文

現在、科学論文はすべてPDFあるいはHTML形式で電子ファイル化されていると考えられる。さらに、インターネット関連の技術、ウェブ関連の技術が進歩し、読みたい論文を手元に置く必要性が次第に低くなってきていると言える。

医学論文のデータベースとしてPubMed(Medline)、Embase医学中央雑誌などがあり、文献検索はこれらのウェブサイトに接続し、検索式を送信することで、結果を手元に得られる。また、GoogleGoogle ScholarあるいはBingのようなインターネット検索サービスも科学論文を対象にしており、上記の医学文献データベースを介さず検索することも可能である。また、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)はランダム化比較試験の研究論文を検索する際には必要となる。

一方フルテキストは各ジャーナルの出版社のサーバに電子ファイルとして置かれており、オンラインで料金を支払えば、すぐ全文を閲覧でき、一部は無料で全文を閲覧できる。Open Accessが拡大するに従い、著者が一定の料金を支払うことで、読者は無料で全文を読める論文が増えてきている。

PubMed検索結果のCSVファイルとしてのダウンロード

PubMedで検索を実行後、引き出された文献リストをCSV形式でファイルとしてダウンロードすることができる。図1に示すように、文献リストの上にあるSaveボタンをクリックし、Selection:をAll results、Format:をCSVに設定して、Create fileボタンをクリックする。通常のファイルを保存するためのダイアログボックスが出てくるので、適当なファイル名をつけて保存する。デフォルトではcsv-検索式からの語句 set.csvのようなファイル名が付けられているので、そのファイル名でよければ、そのまま保存操作を行うこともできる。

ダウンロードが終了するとブラウザーの左下にダウロードしたファイルを開くためのリンクが出てくるので、それをクリックするとExcelがインストールしてあるPCであれば、ファイルをすぐに開くことができる。

図1.PubMedのSave citations to file. 検索結果の全文献の情報をダウンロードするためには、Selection:でAll resultsに設定する。Format:はCSVに設定する。

保存したファイルをExcelで開くと、最初にExcelのファイル形式で保存するようにというメッセージが出るので(図2)、名前を付けて保存ボタンをクリックし、(あるいはファイルメニューから名前を付けて保存)、たとえばxlsx形式で保存しなおす。図3に保存の際のダイアログボックスを示す。

図2.PubMedからダウンロードしたCSVファイルをExcelで開いた状態。
図3.Excelで開いたCSVファイルをxlsx形式で保存する。ファイルの種類(T):でExcelブック(`xlsx)を選ぶ。

このダウンロードしたファイルには、図2の1行目を見るとわかるように、PMID    Title    Authors    Citation    First Author    Journal/Book    Publication Year    Create Date    PMCID    NIHMS ID    DOIの情報が含まれている。

PMIDはPubMedに収載されている文献に付与されているユニークな番号である。PMID番号[uid]あるいはPMID番号[pmid]でPubMedを検索するとその論文ひとつがAbstract形式で表示される。さらに、下記の様にPubMedのURL+?term=PMID番号[uid]をブラウザーのアドレス欄に入力して送信することでもその文献情報を開くことができる。医学中央雑誌(医中誌Web https://demo.jamas.or.jp/)もOpen URLに対応したAPIを公開されるということなので、同じ手法が使えるようになるかもしれない。

DOIはDigital Object Identifierのことで、すべての論文にユニークな番号あるいは記号が付けられ、それをThe DOI® System (https://doi.org/) が管理している。URLとして、https://doi.org/+DOIを入力することで直接その文献情報をブラウザーで開くことができる。PubMed検索結果には、ほとんどの文献にDOIの情報が付けられている。

ExcelでのHYPERLINKの作り方

PubMedからダウンロードした検索結果のデータに、PubMedのデータベースのそれぞれの文献へのリンクとDOIへのリンクを設定して、クリックするだけで、それぞれの情報がブラウザーで開かれるようにすることができる。PubMedではPMIDによってAbstract形式のページが、DOIでは各ジャーナルの出版社のサイトのその論文の情報を開くことができる。

ここで紹介する方法は、マクロあるいはBASICのプログラムは使用しておらず、WindowsでもMacでも動作し、MacではExcelではなくNumbersでも動作する。ブラウザーはWindowsではEdgeあるいはChrome、MacではSafariあるいはChromeで動作する。NumbersでCSVファイルを開く際には、区切りがコンマであることを指定する。

そのためには、ExcelのHYPERLINK関数を利用する。たとえば、以下のスクリプトをセルP2に書き込んであると、セルP2をクリックすると、セルA2にあるPMIDをPubMed側に送信し、PubMedのページが開かれ、そのPMIDの論文がAbstract形式で表示される。図2からわかるように、PubMedからCSV形式でダウンロードしたファイルでは、カラムAにPMIDが含まれている。

=IF(A2<>””,HYPERLINK(“https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=”&A2&”[uid]”),””)

DOIの場合は、以下のようなスクリプトがセルQ2に書き込んであると、セルQ2をクリックするとDOIのウェブサイトを介して、セルK2のDOI情報から、それぞれの出版社の該当する論文の情報が開かれる。図2からわかるように、PubMedからCSV形式でダウンロードしたファイルでは、カラムKにDOIが含まれている。

=IF(K2<>””,HYPERLINK(“https://doi.org/”&K2),””)

方法1

さて、PubMedからCSV形式でダウンロードしたファイルをxlsx形式で保存した後、著者が作成した、excel_add_link_pubmed_doi.xlsx(https://info.zanet.biz/dl/tools/excel_add_link_pubmed_doi.xlsxからダウンロード可)をExcelで開いて、図4の様にセルL1からセルS2の範囲を選択し、コピー操作(Ctr+C)を行い、PubMedからダウンロードしたファイルの方に戻り、そのセルL1を選択して、貼り付ける(Ctr+V)。貼り付けた状態を図5に示す。

図4.excel_add_link_pubmed_doi.xlsxファイルを開いて、セルL1からS2を選択したところ。
図5.excel_add_link_pubmed_doi.xlsxファイルのセルL1からS2をコピーしてPubMedからダウンロードしたファイルをExcelのxlsx形式にしたファイルのセルL1に貼り付けた状態。2行目の文献情報からPMIDおよびDOIのリンクが作成されている。

次に、セルL2からS2を選択して、コピーし(Ctr+C)、セルL3から下の方へ、文献の数分選択し、貼り付け操作を行う(Ctr+V)。すると、図6のようになる。

図6.文献数分セルL2からS2の内容をコピーして、3行目以下の文献情報を含むすべての行に貼りつけた状態。

方法2

もう一つの方法は、著者が作成した、excel_add_link_pubmed_doi.xlsx(https://info.zanet.biz/dl/tools/excel_add_link_pubmed_doi.xlsxからダウンロード可)をテンプレートとして用いる方法である。このファイルをExcelで開いて、PubMedからダウンロードしたCSVファイルをExcelで開いて、カラムAからカラムKまでの文献数分のセルの範囲をコピーして、テンプレートに戻って、同じカラムAからカラムKの範囲に貼り付ける。このテンプレートのExcelシートでは1000件の文献、すなわち、行1001まで、カラムLからカラムSに必要なスクリプトを入力済みなので、カラムAからカラムKまでデータを貼り付けると即座に図6と同じ状態になる。データを貼り付けたら、別名で保存し、以後の操作を行う。1000件以上の文献がある場合は、セルL2からS2までの範囲をコピーしてセルP1002以下に必要な数分貼り付ける。

また、先にテンプレートのExcelファイルのコピーをフォルダー内あるいはデスクトップ上で作成し、ファイル名を目的に応じて変更して、それを開いて、貼り付け操作を行う方法をとることもできる。

なお、PubMedからダウンロードしたCSVファイルをExcelで開いて、カラムAからKをすべて選択して(カラム名のAからKを左クリックしながら選択する)、テンプレートに戻って、セルA1を選択して貼り付けを実行する方法でも同じ結果が得られる。図7に一例を示す。

この方法2を用いる場合は、あらかじめテンプレートのファイルのコピーを作り、ファイル名を変更し、それを開いた状態で、PubMed検索を行い、CSVファイルのダウンロードが終了したら、ブラウザーの左下に表示されるリンクをクリックし、(Excelがインストールされている場合)、ダウンロードファイルを開き、カラムAからKまでを選択し、テンプレートのコピーに戻り、セルA1を選択して貼り付けを実行(Ctr+V)するのが一番速い方法かもしれない。

図7.PubMedからダウンロードしたCSVファイルをデータをコピー・貼り付けで取り込む。右側が、CSVファイルをExcelで開き、カラムAからKを選択した状態。この状態で、コピー操作(Ctr+C)を行い、右側のテンプレートのコピーのファイルのセルA1を選択して、貼り付け操作(Ctr+V)を行う。結果は図6と同じになる。

Hyperlinkの使い方

PMIDはカラムA、DOIはカラムKの同じ行のセルの値を相対参照してHYPERLINKを設定しているので、カラムのコピー・ペーストあるいはセルのコピー・ペーストで位置関係が変わる場合は、書き直す必要がある。これらのHyperlinkが設定されているセルはそのままクリックすると、ブラウザーで目的の文献情報が開かれるが、セルのスクリプトを確認したい場合は、ShiftキーとCtrキーの両方を押しながら、クリックする。

一度PubMedでその文献情報を開いて、そこからFull textへリンクをたどることもできるし、PubMed CentralにあるFull textへのリンクをたどることもできる。

インターネットに接続された状態で、カラムPのセルをクリックすると、PubMedが開かれ、その行の文献がブラウザーで表示される(図8)。

図8.PMIDからPubMedの該当文献を開いた場合。Abstractまで読むことができる。

また、カラムQのセルをクリックするとその行の論文が出版社のサイトが開かれて表示される(図9)。空欄のセルはDOIが設定されていない論文である。

図9.DOI情報で出版社の該当文献を開いた場合。Full textが公開されている場合、ここで読むことができる。

文献選定作業

このExcelのシートでは、文献の選定作業をサポートするため、評価者が採用、不採用、保留の判定結果を残せるようにしている。カラムLあるいはNのセルは0と入力すると不採用でセルの色はなし、2と入力すると採用でセルの色を緑、1と入力すると保留でセルの色は薄青になる。セルをクリックするとプルダウンメニューが表示されるので、そこから選択することもできるが、直接値を入力することもできる。0, 1, 2以外の値を入力するとエラーメッセージが表示される。

また、選定の理由などをコメントとしてコメント欄に入力することもできる。

選定の判断は、上記のHyperlinkを利用して、文献情報を閲覧しながら、行うことができる。

2名分の評価を入力できるようにしてあるので、評価者2名がそれぞれ選定作業を行い、それを照合することも容易になると考えられる。図10に一例を示す。さらに、Excelのユーザ設定の並べ替えの機能を用いて、評価者1>評価者2 PMID>の優先度で並べ替えを行えば、上の方に選定された文献が集まるはずである。図10に並べ替えのキーの設定の例を示す。それぞれが別ファイルで作業をした場合、文献の順序は変更しないようにし、評価者の該当するカラム、コメントのカラムをコピーして一本化すればいい。

図10.Excelの並べ替えとフィルターを用いて選定作業をサポートする。行番号1の上の部分をクリックして、データ全体を選択した状態で、データメニューをクリックして、中央部分にある並べ替えのボタンをクリックし、図のように、並べ替えの設定を行う。+レベルの追加をクリックして、3つのカラムをキーとして設定し、その優先度は評価者1>評価者2>PMIDとする。
図11.並べ替えの結果。評価者1と2が採用と判定した文献が容易にわかり、連続した行に集めることができる。

書誌情報の取得と利用

カラムRには全著者名を含む書誌情報、カラムSは第一著者のみを含む書誌情報を含んでいる。以下のような形式である。それぞれのセルを選択して、Wordなどに貼り付けることができる。複数のセルを選択して貼り付けることもできる。セルを選択した際には、記述されているスクリプトが表示されるが、コピー・貼り付け操作を行った場合は、内容=文献情報が得られる。

Schmid P, Rugo HS, Adams S, Schneeweiss A, Barrios CH, Iwata H, Diéras V, Henschel V, Molinero L, Chui SY, Maiya V, Husain A, Winer EP, Loi S, Emens LA; IMpassion130 Investigators. Atezolizumab plus nab-paclitaxel as first-line treatment for unresectable, locally advanced or metastatic triple-negative breast cancer (IMpassion130): updated efficacy results from a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2020 Jan;21(1):44-59. doi: 10.1016/S1470-2045(19)30689-8. Epub 2019 Nov 27.

Schmid P, et al: Atezolizumab plus nab-paclitaxel as first-line treatment for unresectable, locally advanced or metastatic triple-negative breast cancer (IMpassion130): updated efficacy results from a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2020 Jan;21(1):44-59. doi: 10.1016/S1470-2045(19)30689-8. Epub 2019 Nov 27.

この形式はPubMedで、CSV形式でダウンロードした場合の形式のままであり、形式を変更したい場合、自分でExcel Visual Basicでプログラムを記述するか、もし一文献ずつの作業でもいいのであれば、PubMedのCiteの機能を利用することもできる。上記のPubMedへのHyperlinkで該当する文献を開き、右の上の方にあるCiteボタンをクリックし、Format:から用いたいフォーマットを選択し、Copyボタンをクリックして、クリップボード経由で得ることができる。現在のところ、以下の5種類のフォーマットが使用可能である。いずれのフォーマットもDOI情報あるいはリンク情報を含めていることが注目される。

NLM

Stellon AJ, Hegarty JE, Portmann B, Williams R. Randomised controlled trial of azathioprine withdrawal in autoimmune chronic active hepatitis. Lancet. 1985 Mar 23;1(8430):668-70. doi: 10.1016/s0140-6736(85)91329-7. PMID: 2858619.

AMA

Stellon AJ, Hegarty JE, Portmann B, Williams R. Randomised controlled trial of azathioprine withdrawal in autoimmune chronic active hepatitis. Lancet. 1985 Mar 23;1(8430):668-70. doi: 10.1016/s0140-6736(85)91329-7. PMID: 2858619.

APA

Stellon, A. J., Hegarty, J. E., Portmann, B., & Williams, R. (1985). Randomised controlled trial of azathioprine withdrawal in autoimmune chronic active hepatitis. Lancet (London, England)1(8430), 668–670. https://doi.org/10.1016/s0140-6736(85)91329-7

MLA

Stellon, A J et al. “Randomised controlled trial of azathioprine withdrawal in autoimmune chronic active hepatitis.” Lancet (London, England) vol. 1,8430 (1985): 668-70. doi:10.1016/s0140-6736(85)91329-7

NLM

Stellon AJ, Hegarty JE, Portmann B, Williams R. Randomised controlled trial of azathioprine withdrawal in autoimmune chronic active hepatitis. Lancet. 1985 Mar 23;1(8430):668-70. doi: 10.1016/s0140-6736(85)91329-7. PMID: 2858619.

最後に

以上述べたように、PubMedからCSV形式で検索結果をダウンロードし、Excelで開き、Excelのさまざまな機能を利用することで、文献選定、文献管理が容易になるであろう。

文献の選定作業を終えたのち、ExcelのシートにPICOおよびコメント欄のカラムを追加して、Abstract tableの作成へと連続的に作業を進めることもできるであろう。

PubMedはE-utilitiesが用意されており、データベースに直接検索式を送信し、結果を直接引き出すことができるように設計されている。この場合は、PubMedのウェブページを開くことなく、検索結果を得られる。著者は、これを利用した、pmSearchというウェブサイト(https://stat.zanet.biz/sr/pmsearch.htm) を開設しているが、各種検索フィルターの利用、検索式作成のサポート、文献選定作業をサポートできるRecordと呼ぶHTMLファイルの作成などの機能を用意してある。興味がある人は試してみていただきたい。