ランダム化比較試験では対象者を実験群=介入群と対照群にランダムに割り付けます。ランダムに割り付けるということは、もし実験群と対照群を同数にするのであれば、各対象者が試験に参加することに同意して参加することが決まった際に、0.5の確率で介入あるいは対照に割り付けられるということになります。もし2:1なら、0.33および0.67の確率で割り付けられます。介入か対照のいずれかに割り付けられることになりますが、そこには偶然性が含まれています。
理論的には、ランダム割り付けにより、比較される群間で介入以外の点で差がなくなるので、もしアウトカムに差があれば、介入の効果としか言えないことになります。アウトカムに影響を与えうる未知の因子についてもバランスが取れるということがランダム化比較試験の最大の利点です。
実際には、症例数が少ないと、さまざまな背景因子について比較する群間で差が生じる可能性があります。最小化法や、層別ランダム化はそのような差を小さくすることができます。
もしアウトカムに影響を与えることが分かっている因子がある場合、それらのバランスをとるために、最小化法や層別割り付けといった手法が用いられることがあります。
ベースラインでアウトカムに影響を与えうる因子=背景因子が対照群と介入群で差がある場合、それらは交絡因子となる可能性があります。その場合、有意差があるかどうかは関係ありません。交絡因子は、介入の効果の解析の際に多変量回帰モデルでこれらの因子で調整することが可能です。
コホート研究では、研究対象をリスクファクターで分類し、その後の経過でアウトカムが起きる割合をリスクファクター+とーの2群で比較します。時間軸では、最初にリスクファクターを測定し、一定時間後にアウトカムを測定しますので、解析は前向きになります。リスクファクター暴露群で非暴露群より、アウトカム生起が多いと、因果関係を推定できます。効果指標としてリスク比もオッズ比も算出することができます。また、打ち切りがある生存分析を用いる場合は、効果指標としてハザード比を算出することができます。 すでにアウトカムが生起してから、過去にさかのぼって、リスクファクターを調査し、解析は同じように前向きで行うことも可能です。後ろ向きコホート研究Retrospective cohort studyと呼ばれます。通常のコホート研究であれば、リスクファクター、アウトカム、ありうる交絡因子の測定を計画的に行えるので、後ろ向きコホート研究に比べ、よりバイアスが少なく妥当性の高い研究結果が得られます。
症例対象研究はすでにある病態、あるいは疾患が起きた人と、そうでない人を過去にさかのぼって、リスクファクターを調査しリスクファクターと病態・疾患との関係を解析します。症例群でリスクファクターの暴露が対照群より多かった場合、リスクファクターと発生の関係を推定できます。効果指標としてオッズ比を求めることはできますが、リスク比を求めることはできません。解析の向きが後ろ向きの研究デザインです。
横断研究、診断精度研究(Diagnostic Test Accuracy DTA study)、症例シリーズ、症例報告も観察研究に含まれる。
Quasi-randomized trial 準ランダム化試験はランダム割り付けが不完全な方法によるもの、たとえば誕生日の末尾の奇数偶数、カルテ番号や電話番号の末尾の奇数偶数、受診した順番で交互に割り付ける、などが用いられた場合で、真のランダム割り付けにはならない。
因果関係図Causal Diagram=有向非巡回グラフDirected Acyclic Graph (DAG)
共通原因によるバイアス:交絡バイアス → 治療企図からの乖離によるバイアス
共通原因=交絡因子
I 介入;O アウトカム;C 共通原因=介入とアウトカムの両方に影響を与える因子
これらは変数であり、値が設定される。例えば、介入群はI=1、対照群はI=0と値を設定することができる。
矢印は因果関係を表し、矢印の元が原因、先が結果で、効果は一方向性である。
グレイの矢印が知りたい因果関係。ボックスで囲んであるのが実際の分析対象。
青の点線は“Backdoor path”で、これがオープンすると、I → C → Oの経路でIがOに影響を与えることができるようになり、I → Oで現れる効果にバックドア・パスによる効果が混じることになる。
共通効果によるバイアス:選択バイアス → ランダム化の過程から生じるバイアス、アウトカムデータの欠損のため生じるバイアス、報告結果の選択におけるバイアス
共通効果=Collider合流因子 選択バイアスはCollider biasと呼ばれることもある。
選択バイアスは“対象者の選択に伴って生じるバイアス”であるが、適用可能性、非直接性とは異なる。
I 介入;Oi 中間アウトカム;S 共通効果(選択);Oe エンドポイントのアウトカム
Sを囲むボックスは介入とアウトカムに基づく対象者の除外が研究デザインあるいは分析のしかたで起きることを示している。
系統的測定誤差・誤分類によるバイアス:情報バイアス → アウトカム測定におけるバイアス
I 介入;O アウトカム;I* 誤差を伴って測定された介入の状態;O* 誤差を伴って測定されたアウトカムの状態;U 第三の(通常測定されていない)変数
ボックスで囲んであるのが実際の分析対象。
赤の矢印は介入が測定されたアウトカムの状態に影響を与えることを示す。
緑の矢印はアウトカムOが測定された介入の状態に影響を与えることを示す。
紫の矢印は第三の因子が測定された介入の状態に影響を与えることを示す。
青の矢印は第三の因子が測定された介入と測定されたアウトカムに影響を与えることを示す。
観察研究の場合は、IをE要因曝露に置き換える。
文献:
Luijendijk HJ, Page MJ, Burger H, Koolman X. Assessing risk of bias: a proposal for a unified framework for observational studies and randomized trials. BMC Med Res Methodol. 2020 Sep 23;20(1):237. doi: 10.1186/s12874-020-01115-7.